比べて愉しい国語辞書ディープな読み方 ながさわ著 河出書房新社

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比べて愉しい 国語辞書 ディープな読み方

『比べて愉しい 国語辞書 ディープな読み方』

著者
ながさわ [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
語学/日本語
ISBN
9784309300047
発売日
2021/04/21
価格
1,562円(税込)

書籍情報:openBD

比べて愉しい国語辞書ディープな読み方 ながさわ著 河出書房新社

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

「個性」見極め使い分け

 毎日使う日本語について、より深く知りたいと思ったら、どうするか。ぜひ国語辞典を「読んで」ほしい。「演繹(えんえき)」でも「文化」でも「やばい」でもいい。目についた項目を読んでみると、いくつもの発見があるはずです。

 では、どの辞書を選べばいいのか。国語辞典なんて、みんな同じようだけど――という疑問を持つのは、実はある程度辞書に詳しい人らしい。著者によれば、国語辞典が何種類ほど出ているのかさえ、世間的には知られていないといいます。実際は、スマホのアプリになっているものだけでも10種類以上あるのですが。

 著者は、翻訳家・柳瀬尚紀のことばを引き、国語辞典は「一長一短」ならぬ「一長一長」だと述べます。ある点についてはA辞典が得意、ある点についてはB辞典が得意というように、それぞれの辞書には個性があります。つまり、複数の辞書を身近に置いて、使い分けるのが正解なんですね。著者は主だった国語辞典を対象に、あらゆる角度から比較して、辞書ごとの個性を明らかにしていきます。

 たとえば、明治期の文学作品を読むのに役立つ辞書はどれか。著者が当時の小説から28語を選んで国語辞典で引いてみると、すべての語を載せていたのは『大辞林』でした。これは私の実感とも合います。弁護しておくと、『広辞苑』は古典に強く、『大辞泉』は新語に強いなど、他の辞書にも得意分野があります。

 私が編纂(へんさん)に携わる『三省堂国語辞典』も、生活語の捕捉率が高いと評価されました。関係者としてはうれしい。一方で、「(歴史の)一ページ」など当然載ってもいいことばが、『三省堂』を含めた国語辞典にあまり載っていないなど、恐ろしい指摘もあります。

 著者のながさわさんは正体不明ながら、ネットで鋭い辞書論を発信し、業界ではつとに有名です。読者はその探究心に驚きつつ、一緒に辞書の愉(たの)しみを味わうことになるでしょう。

読売新聞
2021年6月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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