建築家として生きる 松村淳著

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建築家として生きる

『建築家として生きる』

著者
松村 淳 [著]
出版社
晃洋書房
ジャンル
工学工業/建築
ISBN
9784771034754
発売日
2021/03/30
価格
2,970円(税込)

書籍情報:openBD

建築家として生きる 松村淳著

[レビュアー] 木内昇(作家)

 同じく建築設計を生業(なりわい)としていても、建築家、建築士、設計士、設計屋と呼称に違いがあるという。芸術性、作家性の高い「建築」を設計するのが建築家。それ以外は、クライアントの意向に沿い、「建物」の図面を引く技術者。一級建築士の資格をとっても、建築家と名乗れるのは、ほんの一握り。このシビアな業種を、明治期からの歴史や、現役設計士へのインタビュー、収入面など数字的データも交え、掘り下げていく。

 専門職の内面的な道徳気風を「エートス」とし、これを相対化する視角も用い、職能を分析する過程で、業界内の不文律にも踏み込む。独立後に収入面で困っても下請け仕事はしないほうがいい、現場で自ら施工することは建築家としての職業倫理に抵触する、などなど、興味深い事実も。

 建築家は、挑戦的なデザインを「賭け金」にして地位を築く。それは時に、景色から浮いた建造物を生み出すことになるかもしれない。一方で昨今、まちづくりを見据えたプランナーも登場した。変化を続ける建築設計の分野に関わる人々の模索と葛藤が、ここに余さず収められている。(晃洋書房、2970円)

読売新聞
2021年6月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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