テレビドラマクロニクル 1990→2020 成馬零一著 PLANETS/「テレビは見ない」というけれど 青弓社編集部編著 青弓社

レビュー

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テレビドラマクロニクル 1990→2020

『テレビドラマクロニクル 1990→2020』

著者
成馬零一 [著]
出版社
PLANETS / 第二次惑星開発委員会
ISBN
9784905325178
発売日
2021/04/23
価格
3,850円(税込)

書籍情報:openBD

「テレビは見ない」というけれど

『「テレビは見ない」というけれど』

著者
青弓社編集部 [著、編集]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787234865
発売日
2021/04/23
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

テレビドラマクロニクル 1990→2020 成馬零一著 PLANETS/「テレビは見ない」というけれど 青弓社編集部編著 青弓社

[レビュアー] 橋本倫史(ノンフィクションライター)

論じて番組を変えよう

 若者のテレビ離れが語られて久しいが、わたしはテレビに夢中だ。特にドラマは録画し、繰り返し観(み)る。今期であれば『大豆田とわ子と三人の元夫』(脚本・坂元裕二)がそうだった。テレビが好きな理由の一つは、時代の空気が凝縮され、今を映す鏡のように感じられるからだ。

 『テレビドラマクロニクル1990→2020』は、ドラマ評論家の成馬零一によるテレビドラマ年代記だ。野島伸司・堤幸彦・宮藤官九郎、三人を中心に平成年間を振り返ることで、テレビドラマに込められた、同時代に対する批評性が見えてくる。

 『「テレビは見ない」というけれど』は、8人の書き手がフェミニズムやジェンダーの観点からテレビを語った論集である。ここでもドラマは俎上(そじょう)にあがり、寄稿者のひとり・鈴木みのりは「『恋愛・結婚・出産・子育て』がセットの異性愛」を規範とする、「視聴者が生きる社会を支配している価値観」を更新する作品を取り上げる。ただ、先進的なテレビドラマがある一方、一部のバラエティー番組やワイドショーは旧態依然としたままだ。そこで「あんなもん、しょうもない」と見做(みな)す諦念がテレビの古さを温存させるのだと、ライターの武田砂鉄は指摘する。だからこそ、「これでいいのだろうか、という指摘をやめたくない」と。

 わたしたちは、もっとテレビを論じるべきだ。

 成馬によれば、SNSの隆盛も相俟(あいま)って、「もっとも多くの日本人が饒舌(じょうぜつ)に語った作品」は『あまちゃん』だったと記す。だが、「筆者のようなドラマ評論を生業とするライターは、この作品がもたらした財産をうまく活(い)かせなかったという、忸怩(じくじ)たる思いがある」と成馬は綴(つづ)る。その後悔がクロニクルを編ませたのだろう。

 テレビもSNSも、流れ過ぎてゆく。その流れに身を委ねるのではなく、立ち止まって考えることが、テレビを、時代を変える一手となる。

読売新聞
2021年6月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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