身近な雑草たちの奇跡 森昭彦著

レビュー

6
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身近な雑草たちの奇跡

『身近な雑草たちの奇跡』

著者
森 昭彦 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784815606169
発売日
2021/03/23
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

身近な雑草たちの奇跡 森昭彦著

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 散歩に精を出すようになったこの一年。それまで目をとめることもなかった草花に、急に親しげな目を向ける気まぐれで怪しいわたし。しかし覗(のぞ)きこんでも名前がわからない。雑草たちは花がついていなければスルーされ、増えると敵のごとく駆除される。しかし個々には故郷があり、名前に由来があり、親戚があり、恥じらいがあり、密(ひそ)かな狙いがあることを教えてくれるのが本書である。

 敷石の間に生えているつんつんした緑はツメクサ。ナデシコ科で可憐(かれん)な白花をつけるという。いつも踏みつけてごめんなさい。黄花のカタバミは、根から有機酸を分泌し土壌の栄養分を「舐(な)めとり」「穴掘り」を続けコンクリートの隙間から顔を出す。多くのパートナーを持つ帰化種の寄生植物はあちらへこちらへと領土拡大。底知れぬ生命力を持つ多種多様な世界がすぐそばにあるのだ。

 生態が見えてくるようなユーモラスな擬人表現に確かな実地調査の目と親愛がこもっている。その語り口は美しい写真とともに、雑草初心者のわたしをたちまち魅惑の道ばた、空き地へと引き込んでゆく。(SBクリエイティブ、1760円)

読売新聞
2021年6月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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