教会と千歳飴 上野誠著

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教会と千歳飴

『教会と千歳飴』

著者
上野 誠 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093888158
発売日
2021/04/02
価格
1,320円(税込)

書籍情報:openBD

教会と千歳飴 上野誠著

[レビュアー] 尾崎真理子(早稲田大学教授/読売新聞調査研究本部客員研究員)

 万葉学者の著者が専門知と体感を傾け、思い切った日本文化論を展開する。

 <無限に神が生まれ続ける文化構造>の<和がないと、組織が機能しない国>。

 そのリーダーには、古来<能力がない>、けれど利益誘導しない<信用力のある人>がよかった。<議論をせず、「けが人」を出さない>。それが日本の公の会議で、多数決など野蛮極まる――。

 こうした上野史観に与えた生家の影響は重大だった。福岡県で衣料品を商っていた祖父母と両親は、氏神社と菩提(ぼだい)寺の総代、カトリック教会奉仕会の役員を順番に引き受け、何重ものご利益を堂々と祈願した。

 母親は教会で配るマリア像入り千歳飴(ちとせあめ)袋を考案。それが題名の由来で、さらにどっぷりと土俗的互酬性の“お願い文化”を生きた世代の祖母は、庭に茶を撒(ま)き、暮れには物差しをなぜか拝んだ。

 聖典学習と無縁にあらゆる神を敬う無限の多神教、モノ作りも日常の作為もすべて修行とみなす日本人。よって新幹線の清掃を目にすれば合掌、涙……という著者の心情には、共感と共に微苦笑してしまった。(小学館、1320円)

読売新聞
2021年6月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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