畑中章宏著「日本疫病図説 絵に込められた病魔退散の祈り」

レビュー

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日本疫病図説

『日本疫病図説』

著者
畑中章宏 [著]
出版社
笠間書院
ジャンル
芸術・生活/芸術総記
ISBN
9784305709400
発売日
2021/05/06
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

畑中章宏著「日本疫病図説 絵に込められた病魔退散の祈り」

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 コロナ禍でアマビエが注目された。その姿を描き写して疫病、災厄が早く過ぎ去るように祈ったという伝承が現代に復活したものだ。

 本書は護符やまじない絵、玩具などの病除(よ)けの民俗文化を集める。有効な治療法がなかった時代、疫病は悪霊・悪神のしわざと考えられ、神仏を祀(まつ)り疫病除けをするしかなかった。疱瘡(ほうそう)除けには鎮西八郎為朝など神話的な力を持つ武将が描かれた。「はしかのまもり」のおかめは病人のそばに置くとよいといわれ、柔和でどっしりとした姿は慰めを与えただろう。

 奇怪な絵もある。長い魚身に黒髪、女の顔を持つのは竜宮からの使いで豊作と疫病の予言をした「神社姫」「姫魚」と呼ばれる。予言する妖怪の姿は昔の人々のイマジネーションの奥深さを伝える。精巧で斬新な浮世絵版画、ウイットに富んだ戯画、症状を軽くする方法や養生の仕方などの情報が書き込まれた絵からは、励まし合う共同体の姿を知ることができる。目に見えない不安と戦った営為から命と絆への切実な願いが立ち上がってきた。(笠間書院、1760円)

読売新聞
2021年6月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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