早期リタイアを目指す「FIREムーブメント」を日本で実現するには?

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早期リタイアを目指す「FIREムーブメント」を日本で実現するには?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』(山崎俊輔 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、ライフハッカーでもマネーハックコラムを連載されているファイナンシャルプランナー、山崎俊輔さんの新刊。

タイトルからもわかるように、自分らしい「早期リタイア」を実現する“FIRE”について解説した一冊です。

▼山崎さんのマネーハックコラムもあわせてどうぞ

FIRE(ファイア:Financial Independence, Retire Early)は、経済的独立の獲得による早期リタイアを目指すムーブメントです。十分なお金を得て、その運用益などで30代、40代での早期リタイアを目指すのが一般的です。アメリカで流行しており、今そのトレンドが日本にも上陸しようとしています。(「はじめに」より)

アメリカで出版されたFIREについての翻訳書こそ少なくないものの、「日本版FIREの教科書」というべき本としては初だそう。

そのため、きちんと日本の制度に基づいてまとめられているところが最大の特徴。

社会保障制度、税制優遇制度、日本の退職金制度や高齢者雇用制度を踏まえたうえで、「日本版FIRE」を考えているわけです。さらには、ファイナンシャルプランナーならではの視点で「標準的な老後」にも触れているところも注目すべきポイント。

また、本書のもうひとつの特徴として「誰もが実行可能な投資方法」でFIREを目指すことも挙げられます。

毎日、株価や為替レートをウォッチし、何度も注文を出す必要はありません。むしろ仕事やプライベートの充実を後回しにせず、しかし年4%程度の運用利回りを簡単に獲得することを紹介します。(「はじめに」より)

ならば、まずは基本を押さえておきたいところ。そこできょうは、第1章「FIREのキホン」内の「FIREムーブメントとは何か」に焦点を当ててみたいと思います。

経済的な独立を実現し早期リタイアを図る

冒頭で触れたようにFIREとは「Financial Independence, Retire Early」の略称で、日本語に訳せば「経済的な独立と早期退職」ということになるようです。

早期退職については、これまでも多くのことが語られてきました。とはいえ経済的安定が伴っておらず、あまり現実的でなかったのも事実。そんななか、明確なメソッドが形になったものがFIREだというのです。

一般的なFIREムーブメントでは「年収の25年分を資産形成する」ことを目標とします。そして、「年4%の収益を得て取り崩す(4%ルール)」ことにより、資産は減らずに、一生涯の経済的安定を確保したリタイア生活が可能になるとします。(20〜21ページより)

仮に日本円で年400万円で暮らすとするなら、1億円を確保すればFIREが達成できる(1億円×4%=400万円)ということになるわけです。(20ページより)

海外、とくにアメリカでのトレンドは?

FIREのトレンドはアメリカで始まったとされ、2010年代にミレニアル世代(2000年代以降に社会人になった若い世代)に支持され、新しい考え方として広がったそうです。

アメリカでは月払いではなく、月2回払いや週払いの給与計算をする会社が少なからずあります。お金が入ってくるサイクルが短いので魅力的にも思えるかもしれませんが、よくない点は家計が“その日暮らし”に陥ってしまいやすいこと。

「とりあえず1週間暮らすことができれば、また来週には入金がある」では、経済的独立は望めないわけです。それどころか、クレジットカードのリボ払いの残高が積み上がっていたり、キャッシングやカードローンの返済で首が回らなくなってしまっている人も。

アメリカのFIRE関連書籍の訳書では、幼少時の貧困生活のエピソードが語られることもあるそう。つまり、お金のことで困る親を見て育った子どもの世代が社会人になり、経済的不安のない生活を夢見るのは自然な流れだともいえるのです。(21ページより)

支え合うコミュニティがある地域も

アメリカ社会には、同じ価値観や悩みを持つ人たちが支え合ったり、励ましあったりするコミュニティがあります。喫煙習慣やアルコール中毒からの脱出を図っている人が、そうしたコミュニティ内で同じ苦しみを抱えた仲間と話し合うということ。

日本にはあまり見られない仕組みですが、アメリカではコミュニティでお互いにエールを送り合っているということ。FIREもそうした土壌の上にあり、そこで多くの人たちが切磋琢磨しているのです。(22ページより)

アメリカ人はFIREで豊かになっている

当然ながらFIREの前提は、経済的安定が得られず死ぬまで働き続けることへの恐怖です。

サム・ライミが監督した「スパイダーマン2」という映画があります。

主人公の育ての親(叔母さん叔父さん)は善良な人たちですが経済的には恵まれていません。

叔父さんが亡くなったら、叔母さんはダイナー(庶民的なレストラン)で働き始めます(おそらく低賃金で)。そうしないと生きていけないからです。(24ページより)

アメリカ社会の随所にありそうな話ですが、そうした典型的な老後のイメージは変わりつつあるのだと著者はいいます。

アメリカの高齢者の懐具合は、時代を追って改善されているというのです。

いわゆる「老後に2000万円」のレポートには、日本の高齢者の資産状況はこの数十年変化がなかったところ、アメリカの高齢者は10年おきに経済的な余裕が増していることが示されています。(24ページより)

だとすれば、日本で暮らす私たちに、同じことができない理由はないということになります。

だからこそFIREを目指し、老後の経済的安定を引き寄せるべきだと著者は主張しているわけです。(24ページより)

・何歳まで、どのように働きたいのか。自分の目指す働き方がわかる

・リタイアして何をするのか。自分の本当にやりたいことがわかる

・リタイア前、リタイア後、どんな生活を送りたいのか。自分の理想のライフスタイルがわかる

・自分の人生において譲れないもの・ことがわかる

(「はじめに」より)

FIREについて本気で考えてみることには、上記のようなメリットもあるのだとか。先の見えない時代だからこそ、参考にしてみれば未来への有効な糸口が見つかるかもしれません。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2021年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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