<東北の本棚>地元奏者の言葉を紡ぐ

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仙台ジャズノート 暮らしの中で芽吹くオト、つなぐオト

『仙台ジャズノート 暮らしの中で芽吹くオト、つなぐオト』

著者
佐藤和文 [著]
出版社
金風舎
ISBN
9784910491011
発売日
2021/03/08
価格
1,650円(税込)

<東北の本棚>地元奏者の言葉を紡ぐ

[レビュアー] 河北新報

長年のジャズファンである著者は、自身の地元である仙台市の周辺で、プロアマ問わずジャズに携わる人々の演奏や話に耳を傾けていく。本書を通じて、小学生から80代まで多様なスタイルでジャズを楽しむ人々の活動を知り、彼らの魅力的な言葉をかみしめれば、足元から発信される音色をもっと楽しんでみたくなるだろう。
 ある若手ミュージシャンとの対話からはこんな言葉を引き出す。「その時面白いと感じる何かを取り入れたり、先人が生み出したものの『その先』を追い求めてもがき続けたりする音楽家こそ、本当は『ジャズミュージシャン』なのではないか」。真剣に音楽と向き合う様子が目に浮かぶ。
 クラシックからジャズに転身したサックス奏者は「毎回、演奏も違うわけじゃないですか。こんなに『生き物』な音楽はありません」と、アドリブが重視されるジャズの世界を熱っぽく語る。
 高度経済成長時、音楽家が活躍したキャバレーについての生き生きとした記述も面白い。コロナ下でも、手探りで活動を続ける奏者の姿も取材している。
 著者は元河北新報社記者。同社を定年退職後、フリーの立場で地域メディアなどをテーマに取材活動を行っている。(安)
   ◇
 金風舎03(3353)5178=1650円。

河北新報
2021年8月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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