『世界ヤバすぎ!危険地帯の歩き方』
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<東北の本棚>豊富な取材 実態克明に
[レビュアー] 河北新報
むちゃで豪快な旅番組として人気を博したTBS系の「クレイジージャーニー」に出演していた仙台市出身のジャーナリストが、旅についての考え方や思い出などをつづった一冊。長年、スラム街など世界中の危険地帯を取材し続けてきた著者ならではのエピソードに引き込まれる。
フィリピンのスラム街では臓器売買に手を出したという男性を取材。銃撃された際に医者から内臓を売るよう持ち掛けられ、販売価格は数万円相当だったという内容を淡々と書く。各国で殺し屋へのインタビューも試みており、日本では1000万円、ジャマイカならば5000円などと請負金額にまで迫っている。
危険な場所を目指すだけあって犯罪を巡る記述が目立つが、薬物については特に詳細だ。タイでは大麻の売買実態を調べようと「プッシャー」と呼ばれる売人を探し回り、「5グラムで300バーツ(1000円相当)」という市場価格を突き止める。各国での覚醒剤の呼び名や各種薬物の中毒症状も細かく記されていて、この分野での取材量の豊富さがうかがえる。
取材の裏話も読み応えがある。日本で悪玉にされやすいたばこも、著者には「海外の危険地帯を取材する上では非常に有効なアイテム」。健康ブームのあおりで一箱1000円の国もあるし、箱売りをしていない国もある。「ちょっとした情報の見返りに2、3本渡すのが報酬の定番」とし、密林取材では蚊よけにもなると主張する。
著者が旅に魅了されたきっかけは高校時代の一人旅。旅先の風景を思い出し、仙台市の自宅に帰宅した後は愛用の地図が立体的に見えるようになった。徐々にのめり込み、海外に飛び出すようになっていったという経緯も読ませる。(桜)
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