『孤独は社会問題』
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自分たちに合う互助の方法は?
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
近年のイギリスに関してはEU離脱をめぐる問題が話題になりがちで、2018年創設の「孤独担当大臣」とその仕事について、ボリュームのある報道は多くない。多賀幹子の『孤独は社会問題 孤独対策先進国イギリスの取り組み』で初めて詳細を知った。
メイ首相(当時)は、孤独を公衆衛生上もっとも大きな課題と位置づけた。国民の7人に1人が孤独を感じていたからだ。孤独を私的な問題ととらえれば政治が介入するのはおせっかいだが、社会的コストが無視できない。孤独が原因の体調不良による欠勤や生産性低下で生じる損失は巨額で、医療費もふくらむ。極端な話、孤独が限界に達して社会に敵意を抱いた人がテロに走る可能性だって考えられるだろう。
定年退職、配偶者の死、重い病気など、孤独のきっかけは多様だが、一人暮らしは必ずしも孤独の原因ではなく、居場所のあるなしのほうが大事だ。
中高年男性が集まるDIYスペース「メンズ・シェッド」や、大手コーヒーチェーンが設けた「おしゃべりテーブル」(客同士が会話する)など、人々の生活に根づいた取り組みが紹介されている。たとえその場かぎりの話し相手であっても、他人との接触は人の気持ちを明るくする。
家族以外の人と飲食をする機会が激減したいま、社会から取り残された感じを抱いていらだつ人も増えた。日本人も、自分たちに合う互助の方法を見つけて育てたいところだ。