「3日坊主」で終わってしまっても、自分を責める必要はない

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脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい

『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』

著者
瀧 靖之 [著]/郷 和貴 [著]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784296109586
発売日
2021/08/06
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「3日坊主」で終わってしまっても、自分を責める必要はない

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』(瀧 靖之 著、郷 和貴 聞き手、日経BP)の著者は、東北大学で脳を専門に研究していて、医師でもあり、ベンチャー企業を立ち上げた経営者でもあるという人物。

本書は、そんな著者が世界最先端の研究を基に編み出した「人間の脳を賢くする科学的な方法」について解説したもの。聞き手を担当しているライターの郷 和貴さんは、その“結論”について次のように記しています。

頭のよさとは多面的である。人の知能は心がけ次第で伸びる。人の脳は何歳でも成長するし、歳をとっても若く保つコツもある。逆に、脳の成長を止めるのは「あきらめ」である。(「プロローグ」より)

当初は子どもの脳の力を伸ばす方法について聞いてみたものの、結果的には「同じことをすれば大人の脳を成長させることも可能だ」ということがわかったのだそうです。

たとえば40代にもなると、もの忘れや、固有名詞が出てこない、集中力が途切れるなどの問題が出てくるもの。そうした問題を解決できるのはもちろんのこと、同じ方法で認知症の予防につなげることも可能だというのです。

そんな本書の第5章「習慣の力を利用! 何歳になっても賢くなる方法」のなかから、きょうは「『3日坊主』は当たり前」に焦点を当てたいと思います。3日坊主になってしまうと気持ちが落ち込んでしまいがちですが、その必要はないのだとか。

「3日坊主」は当たり前

この項で問題になっているのは、なにか新しい習慣を身につけることの難しさ。聞き手の郷さんは親としての立場から、「自分がなにか習慣を身につけるのも難しいし、子どもにやらせるのはもっと難しい」と述べています。

たしかに、人がなにかを習慣化するのは難しいこと。しかし瀧先生はこのことについて、「運動でも英語の勉強でもピアノの練習でも、それが本人にとって“新しいこと”である限り習慣化するのは基本的に難しい」のだと主張しています。

だから続けられなかったとしても、3日坊主になってしまったとしても、自分を責める必要はまったくないです。(185ページより)

ある行動を習慣化するには、平均で66日かかるという研究があるのだといいます。だとすれば、実に2カ月以上。しかも「平均で66日」とはいってもばらつきが大きく、実際には18日から254日までとかなりの個人差があったのだそうです。

つまり、もしもなにか新しいことを始めたいのなら、習慣化できるようになるまでには2カ月あるいは半年くらいかかるものだと考えておいたほうがいいというわけです。

なぜ新しい習慣を身につけるのが大変なのかというと、私たちの1日の行動のうち、45%は習慣で成り立っているという研究があります。つまり、すでに半分近くの行動がほとんど無意識のうちにやっている習慣なんです。(186ページより)

それは、朝起きてからのルーティンを考えてみればわかりやすいのではないでしょうか。寝ぼけまなこで半分意識が飛んでいたとしても、私たちは多くの場合、ちゃんと決まった行動ができるからです。

それは、脳のエネルギー消費を抑えるために人間に備わった機能なのだそう。逆にいえば、無意識で行う習慣を変えること自体がとても大変だということ。

無意識の行動は、脳の中では低エネルギーでこなせるので、太いネットワークになっているわけです。新しい習慣を身につけるためには、普段使っていないネットワークを使い続けないといけない。

それって脳からすると「不快なこと」なんです。(186ページより)

脳には「現状維持バイアス」があり、新しいことを行うことを反射的に避けようとするというわけです。(184ページより)

次にチャレンジするときのハードルが下がる

だとすれば、なにかと言い訳をして新しいことを始めないというような「逃げ癖」のある人は、現状維持バイアスが強いということになるのでしょうか?

そう考えると不安にもなりますが、「それが普通」なのだといいます。

普段運動していない人がいきなり毎日筋トレしようとしても、「今日はサボろうかな」と思ってしまうのは自然なこと。自制心を備えていればそれを乗り越えられるかもしれませんが……。

だから「3日坊主」に陥るのは当たり前のことなんです。(187ページより)

3日坊主で終わってしまった場合、「成果が出る前にやめちゃってもったいなかったな」と反省する人は少なくありません。しかし3日坊主になったということは、少なくとも「なにか新しいことを体験してみた」ということでもあるはず。

たとえば、英会話レッスンにしてもジム通いにしてもそう。それらを体験することによって、脳は英会話レッスンの雰囲気や、ジムで運動するときの感覚がどういうものなのかといった情報を記憶するわけです。

それだけでも収穫なんですよ。何年かたってから「もう一度、英会話やろうかな」と思いついたときに、最初の心理的ハードルが下がるんですよ。(187ページより)

だからこそ、3日坊主で終わってしまっても気にする必要はないということ。たしかにそう考えると、3日坊主の罪悪感も薄れるはず。そして、長い目で見ればそれが、次の行動への動機づけになるということなのでしょう。(186ページより)

会話形式で話が進められていくので、無理なく読み進めることが可能。そんな本書を活用し、頭を活性化させてみてはいかがでしょうか?

p>Source: 日経BP

メディアジーン lifehacker
2021年8月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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