もうあかんわ日記 岸田奈美著

レビュー

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もうあかんわ日記

『もうあかんわ日記』

著者
岸田 奈美 [著]
出版社
ライツ社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784909044303
発売日
2021/05/31
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

もうあかんわ日記 岸田奈美著

[レビュアー] 南沢奈央(女優)

 父は中学の時に他界し、母は車いすユーザー、弟はダウン症。岸田家の日々を綴(つづ)った著者の自伝的エッセイ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は記憶に新しい。出版から半年も経(た)たない今年2月、母親が2週間以上も高熱にうなされ、入院。生死をさまよう大手術を行うことになり、著者は実家の留守を預かることに。

 実家にいるのは、もの忘れとタイムスリップが進んでしまったばあちゃん、その影響で情緒不安定になってしまった弟、そして荒れる2匹の犬……。「もうあかんわ」。その言葉が心から漏れた3月10日から、37日間書き続けた日記をまとめたのが本書である。

 書くことで、今日という日を過去にし、読んでもらうことで、明日を生きる力を得る。書く手を止めなかった著者は根っからの作家だ。ユーモアと芯のある言葉に、こちらは泣き笑い。

 愚痴をこぼすこと、弱音を吐くこと、あきらめること。著者自身がさらけ出すことで、そのすべてを肯定してくれる。不幸は「あとから幸せを感じるための貯金」。こんなに人を勇気づける日記があるとは。(ライツ社、1650円)

読売新聞
2021年8月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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