田村優子 写真・文「場末のシネマパラダイス 本宮映画劇場」

レビュー

5
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場末のシネマパラダイス

『場末のシネマパラダイス』

著者
田村 優子 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
芸術・生活/演劇・映画
ISBN
9784480818577
発売日
2021/07/01
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

田村優子 写真・文「場末のシネマパラダイス 本宮映画劇場」

[レビュアー] 尾崎真理子(早稲田大学教授/読売新聞調査研究本部客員研究員)

 おばけ映画のポスターが街角に現れると、夏休みも佳境に入った。大魔神も「007」も成人向け映画も、同じ館に看板がにぎやかに並んだ。昭和半ばの地方育ちなら、記憶に残る風景だろう。

 福島県の本宮映画劇場は、往時の様子を奇跡のようにとどめる。開館は1914年。2代目の田村修司館主は、常設をやめた後も復活の日を夢見て、カーボン式映写機を維持してきた。その父から、三女にあたる著者は戦後の裏映画史を、熱心に聞き取って本書とした。

 福島弁の語りと共に紹介されるのは、経営のためには浪曲も女子プロレスも興行した、年季の入った館内。町と家族の成長を伝えるスナップ。「場末っぽい」(父)「うさんくさい」(著者)、かなりエロティックな秘蔵のチラシ類。一昨年の水害で危機に瀕(ひん)した、大量のフィルム……。

 昭和レトロブームと昨今いわれるが、懐古に値する本物の“キッチュ”が、感動的な密度で詰まっている。(筑摩書房、1980円)

読売新聞
2021年8月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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