1978年生まれの著者がカンカラ三線に惹かれたワケ

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カンカラ鳴らして、政治を「演歌」する

『カンカラ鳴らして、政治を「演歌」する』

著者
岡 大介 [著]
出版社
dZERO
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784907623425
発売日
2021/07/15
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

1978年生まれの著者がカンカラ三線に惹かれたワケ

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 タイトルのカンカラとは何か? 沖縄に三線という三味線に似た楽器がありますが、その胴の部分が大ぶりの缶詰の空き缶でできているもので、カンカラ三線と呼ばれています。

 演歌は我らが知る小節を回す演歌ではなく、明治の中期に声だけで歌われた『演説歌』のことで、その先達として添田唖蝉坊の名が知られています。知る人ぞ知るですが。

 著者はタイトルそのままに「カンカラ鳴らして、政治を『演歌』する」わけですが、政治に正面から毒を吐くのではなく、風刺するところにその特長があります。当時の歌詞そのままもあり、著者の作詞、つまり替歌もありという形でです。

 演歌とカンカラ三線の取り合わせが面白く、しかもそれを1978年生まれの若さでというのが評価され、芸能界の目利きである小沢昭一、永六輔といった人たちに見出されました。談志も「岡ってないいな、見込みがある」と言いました。因みに大介はタイスケと濁りません。これを機にお見知りおきを。

 著者はサッカー少年でした。夢破れ、今度はフォークシンガーとしてメジャーデビューを目指します。また挫折し、ついに「演歌」に辿り着くわけですが、プロセスに頷くことが多く、必然的にそこへ導かれたように感じます。

 カンカラ三線を背負い、著者は全国各地に出かけます。「何それ、楽器?」。その一言があれば、たちどころに演歌が始まります。ビールケースを引っ繰り返せば、そこが舞台になるのですから。

 酒席で政治風刺をやるとからまれることがあります。「おまえは右翼か左翼か」と。この時の著者の答えがいいんです。「はい、無翼です」。実はこれ、唖蝉坊の息子知道の著書の中にあるセリフとのことですが、実にいい返しです。相手の出鼻をくじくユーモアがあるからです。ハッキリしろなどと言うと、野暮ということになりますから。

新潮社 週刊新潮
2021年9月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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