戦争の終わらせ方=出口の見つけ方

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戦争の終わらせ方=出口の見つけ方

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 戦争が終わればすぐに平和が来るわけじゃなく、戦争は終わるときも悲惨だし、終わってからもまだ悲惨―ということが、あらためてよぉくわかるのがアフガニスタンの大混乱。

 米軍の撤退完了より早い、超高速なタリバンの首都進軍により大勢の棄民が発生して、その大混乱を新聞やニュースは1975年4月のサイゴン陥落になぞらえて解説することが多いけれど、もうひとつ思い出されるのは1945年8月、ソ連参戦に泡を喰って逃げ出す関東軍に見捨てられた満州の民間人たちです。

 そんなことが頭に浮かぶのは、ワタシがそのひとりだったからとかその子孫だからとかいうわけではなく、『戦争はいかに終結したか』を読んだばっかりだったから。戦史研究者で防衛省防衛研究所主任研究官の千々和泰明が、第一次・第二次の世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争の終わらせ方を解きほぐしてくれる新書なのよ。

 7月の新刊として手に取ったときは、8月の終戦シーズンに合わせての刊行かねとか悠長に勘ぐってたら、その8月にカブールが陥落して一転、この世界史的大事件を読み解くために緊急出版されたかのような喫緊の一冊に化けた。どこまでも続く泥濘から抜け出すための戦略・戦術が満載ゆえ、大風呂敷拡げっぱなしの金融緩和から大失敗の感染症対策、そしてマンネリ気味の夫婦喧嘩まで、出口が見えないアナタやワタシに役立つ書でもあり。

新潮社 週刊新潮
2021年9月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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