有田哲平「映像化、絶対不可能」 フェイク・ドキュメンタリー「出版禁止」シリーズにハマったワケ

対談・鼎談

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

出版禁止 いやしの村滞在記

『出版禁止 いやしの村滞在記』

著者
長江 俊和 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103361749
発売日
2021/08/31
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

長江俊和『出版禁止 いやしの村滞在記』刊行記念対談 「謎」の楽園――作る楽しみ、解く快感

[文] 新潮社

最初は「なんじゃこりゃ?」だった

有田 長江監督の作品にハマった切っ掛けは、「放送禁止」なんです。何となく三本組のDVDボックスを買った。まず一本目を見たんですが、最初は「なんじゃこりゃ?」と思ったんですよ。何がなんだか全然分からなくて、最悪だよ、って(笑)。タイトルからして、何らかのタブーを扱ってると思うじゃないですか。でも見ると、何が「放送禁止」なんだか分からない。損したなあ、なんて思ってたんですが、僕が買ったのはボックス、三本組なんですね。ここがポイントなんです。レンタルで1しか見てなかったら、僕はここまで来なかった!

長江 来ませんでしたか(笑)。

有田 せっかく買ったし、もったいないので、仕方なく2を見たんです。そしたら、今回の小説と同じで、途中から「あれ? あれれ?」という違和感がどんどん出てくる。

長江 「ある呪われた大家族」ですね。

有田 そうです。早い段階から、なんか変だな、ちょっと待てよ、考えすぎかな、とか色々気になるんですが、最後に「え? そういうことなの?」と、予想外のところに連れて行かれる。そうして、ようやく楽しみ方が分かって、3の「ストーカー地獄篇」は、心の準備をして見たんです。

長江 何も知らないで見るのと、仕掛けがあるはずだ、という心構えで見るのとは全然違いますもんね。

有田 でも、そのときは、さっぱり分からなかった。「放送禁止」ファンの風上にも置けないくらい見落としが多かった。それで、初めてネタバレサイトで調べたんですよ。そしたら、自分がまったく気付けなかったことが沢山書いてあって、「あ、あ、ああーっ! すげぇ!」ってなって。「放送禁止」はまだまだこんな見方があるんだ、と感動したんですよ。それからはもう「楽しい、楽しい」って、友達にぶわーっと宣伝して。僕、いいなと思ったものは、みんなに勧めまくるんですよ。

長江 有田さんから勧められて見た、という話を何人もの人から聞きました。ありがたいです。

有田 「一緒に見よう」って、テレビ局の人とか、芸人仲間とかで集まって鑑賞会をやったりして。見終わってから、「さあ、どう思う?」って僕が司会をやるんですよ。一人ずつ気付いたことを言ってもらって、断片を集めて。自分が気付けなかったことを聞いてるうちに、一人また一人と、「分かったーー!」ってなっていくんですよ。それを上手く誘導するのが楽しくて。

長江 もの凄く贅沢な鑑賞会ですね。

有田 この会、メチャクチャ好評なんですね。今でもやってますけど、来た人はみんな絶対にハマる。ただ、僕は二十回も三十回も見てますから、みんなが「あれ、何か映ってたぞ」とか盛り上がっているときに、一人だけ黙って終わるのを待ってるのが辛い(笑)。初めて、リアルタイムで楽しめたのが、6の「デスリミット」です。みんなでテレビの前に集まって鑑賞して。ああだこうだ考察するのが本当に楽しかったですね。そして、満を持して劇場版「密着68日 復讐執行人」に行くわけです。もちろん、初日に。

長江 初日ですか!

有田 ファン仲間と一緒にね。もう凄かったですね。ネタバレにしかならないので、詳しいことは言えないですが、テレビ版6から劇場版へのつながりは、僕の中で、他に匹敵するものがないくらいの感動でした。でも、残念ながら、本当の大オチは分からなかった。

長江 DVDの特典映像で明かしてるやつですね。

有田 全部分かったつもりでも、それでもまだ何かあるのが「放送禁止」なんですよね。それで、劇場版を三作見終わったくらいのタイミングで、とうとう長江監督にお目にかかれることになった。

長江 フジテレビのプロデューサーさんが紹介してくれて。

新潮社 波
2021年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク