『出版禁止 いやしの村滞在記』
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長江俊和『出版禁止 いやしの村滞在記』刊行記念対談 「謎」の楽園――作る楽しみ、解く快感
[文] 新潮社
「放送禁止」新作秘話
有田 あんな映像作品作る人ですからね、エキセントリックな人なんじゃないかとか、取っ付きにくい人なんじゃないかとか、とんでもなく妄想が膨らんでて。
長江 そうだったんですか。
有田 「あ、そう。見てくれてるの」みたいな素っ気ない感じだったり、「俺はやりたいことしかやらねえよ」みたいな尊大な人だったりするのかな、と。ところが、実際に現れたのは「あ、どうも、どうも」みたいな、もの凄く腰の低い人で。
長江 僕も、有田さんが「オールナイトニッポン」で、「放送禁止」のことを話して下さってたというのは聞いていました。だから、「遂にお会いできるのか」って、楽しみでしたけど、緊張もしてたんですよ。売れっ子で、テレビであれだけ番組持ってる方ですから、それこそ、オラオラみたいな感じなのかも、とか思っていたら、全然そんなことなくて。
有田 もう、一番弟子ですからね。「監督、あそこどうなんですか?」って、聞きたいことだらけでした。しかも監督は、「色々やりたいですね」なんて言ってくれて、凄く前向きでバイタリティーもあって。
長江 映像作るのも小説書くのも好きなので、機会さえあれば色々やりたい気持ちは常にあるんですよ。
有田 だからね、もったいないんですよ。「放送禁止」も「出版禁止」も、もっと沢山の人に届けたい! そんなふうに、僕があまりに熱いファンだったこともあって、プロデューサーさんに「放送禁止の新作やりましょうよ!」みたいなことを言ったんですよね。
長江 それで実現したのが、「放送禁止 ワケあり人情食堂」ですね。
有田 新作では、僕はもう特権で、ストーリーテラーをやらせていただいたんです。「放送禁止」を知らない人も「有田がまたなんか変なこと始めた」と思って見てくれればいいな、という気持ちもあって。それに、ただのドキュメンタリーとして見てしまうという人も多い、って話も聞いてたんですよ。
長江 最初と最後を見てないと、ただのドキュメンタリーにしか思えないですからね。
有田 そうなんです。でも、「見方が違うんだ、そうじゃないんだ」っていうのを伝えたくて、最後に解説っぽいものを入れさせてもらいました。本当は、あそこを考えるのが一番の楽しみですから、DVDの特典とかでやることなんですけど、あのときは、その場である程度完結して楽しんでもらうというのを一番に考えたので。
いち早く完成版を見せてもらって、長江監督自らに「さあ有田さん、どうですか?」ってやってもらえたのは嬉しかったですね。
長江 最初の試写は、謎解きがない、メチャクチャ難易度が高いバージョンでしたね。
有田 気付いたことを言うと、「いいとこまでいってますね」とは言われるんですけど、全然真相には至れない。そして、ちょっとずつヒントを貰って、最後に「ああーっ、そうだったのか、すげえ」ってなる。今まで自分が周りにやってたことを、初めて、しかも監督にやってもらえたのは、本当に特権的な喜びでしたね。