『「明るい未来」を子どもたちに』
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<東北の本棚>苦難と闘う人間の強さ
[レビュアー] 河北新報
2018年から続く写真絵本シリーズ「それでも『ふるさと』」の続刊。東京電力福島第1原発事故で避難を強いられ、平穏な日常を奪われた人々の10年をフォトジャーナリストが追った。
全3巻。「『明るい未来』を子どもたちに」は、福島県双葉町で生まれ育った大沼勇治さんを取材した。町内にかつて掲げられた看板の標語「原子力明るい未来のエネルギー」の考案者。子どもたちに事故の真実を伝えるため、避難を繰り返しながら様変わりした古里の姿を記録する。
「土に生かされた暮らしをつなぐ」は全村避難した同県飯舘村に帰還し、農業を再開した人々を紹介。「やっぱり百姓仕事が生きがいだべ」という言葉が力強い。
「福島に生きる凛(りん)ちゃんの10年」は事故により、3歳で飯舘村を離れた少女の成長記録。たくましく生きる姿とともに、福島の子どもたちが置かれた過酷な環境を伝える。
それぞれの生き方を通し、原子力災害による被害の甚大さや苦難と闘う人間の強さが描かれる。既刊を含め、全7巻のシリーズ。原発事故とどう向き合うか。作品群は私たちへの問い掛けでもある。
著者は1956年静岡県生まれ。ドキュメンタリー映画も監督し、事故後の福島の姿を伝え続ける。(和)
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農文協03(3585)1142=各巻2200円。