中国共産党、その百年 石川禎浩 筑摩選書 中国共産党の歴史 高橋伸夫 慶応義塾大学出版会

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中国共産党、その百年

『中国共産党、その百年』

著者
石川 禎浩 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784480017338
発売日
2021/06/17
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

中国共産党の歴史

『中国共産党の歴史』

著者
高橋 伸夫 [著]
出版社
慶應義塾大学出版会
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784766427547
発売日
2021/07/21
価格
2,970円(税込)

書籍情報:openBD

中国共産党、その百年 石川禎浩 筑摩選書 中国共産党の歴史 高橋伸夫 慶応義塾大学出版会

[レビュアー] 国分良成(国際政治学者・前防衛大学校長)

創立100年 成果と犠牲

 本年7月の中国共産党創立100年に際して、日本の中国現代史研究を代表する2人の研究者が、それぞれに個性的な党史論を同時に出版した。

 石川の著書は教科書的な通史ではない。過去と現在の連続線のなかで、中国共産党の特性を明快に論じている。今日まで続く共産党の「DNA」はコミンテルンと毛沢東にある。これが著者の議論の出発点である。

 石川は党創立に関する研究の第一人者である。歴史的意義を有するに至った党の創立大会は開催日程すら曖昧なこと、大会の規約や決議はアメリカ共産党の文献を参照したこと、毛沢東を含む創立時の党員の多くは高学歴者だったことなど、興味深い指摘を多く盛り込んでいる。また、休憩所のように挟み込まれたコラムは流行歌の誕生や内容にまつわる秘話の数々で、遊び心が生きている。

 高橋は石川と異なり徹底的に通史にこだわる。現有の先行研究と史料を丁寧に配置し、抑制的に歴史をまんべんなく再構成することに成功している。とりわけ中国共産党の一定の歴史的成果を認めつつも、その過程で生まれた無数の人的犠牲に照射した部分の叙述が鮮烈だ。

 高橋によれば、毛沢東の指導権確立過程における富田事件や整風運動などの党内粛清に全体主義の種子が含まれていた。建国直後の反革命鎮圧や反革命粛清の運動では殺害の数値目標が設定され、前者は全人口の0・1%であったという。その後の反右派闘争、大躍進、文化大革命の冤罪(えんざい)を含めた人の犠牲については言うまでもない。

 勝者が創作し、不都合な部分を隠蔽(いんぺい)する中国史の地層は、迷宮事件の宝庫である。特に現代史は難しい。二つの著書の論法は違えど、史料も不十分でいまだ「歴史」に至らない最近の歴史に関しては、一般的な記述に止(とど)まっている。とはいえ、勇気ある2人の100年マラソンの挑戦と完走に敬意を表したい。

読売新聞
2021年8月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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