政界再編 離合集散の30年から何を学ぶか 山本健太郎著 中公新書

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政界再編

『政界再編』

著者
山本 健太郎 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784121026514
発売日
2021/07/20
価格
924円(税込)

書籍情報:openBD

政界再編 離合集散の30年から何を学ぶか 山本健太郎著 中公新書

[レビュアー] 橋本五郎(読売新聞特別編集委員)

政権交代へ 中道の勧め

 先進国の中で日本は極めて特異な国である。保守合同以来66年。非自民政権は細川・羽田、民主党内閣のわずか4年余にすぎない。東西冷戦や選挙制度、自民党による政局・政策運営の巧みさなどさまざまな理由はあろうが、離合集散を繰り返してきた野党の責任も免れない。

 本書は細川非自民政権から今に至る政界再編の歴史から導き出される教訓とは何かという分析の書であると同時に、どうしたら政権交代が可能かという実践の書でもある。

 そもそも長期にわたって一党優位を誇ってきた自民党に対し、野党側は根本的なジレンマを抱えている。自民党に勝つためには大同団結しなければならない。しかし、多様な出自、政策の違いがやがて路線対立の激化となって分裂に至ってしまう。その繰り返しの歴史だった。

 一体どう乗り越えればいいのか。大同団結した後の政権の姿を明示するとともに、政権として決めたことは全員が守るという規律の維持が必須になる。規律の維持については、異論を吸収しながら「全会一致の原則」で政策を決定する自民党の知恵に学ぶべきである。

 著者はこれまでの分析を通じて一つの法則を導き出す。大同団結政党は中道に位置して有権者を引きつけなければ持続可能なものにはならないということだ。中道とは外交・安保政策などでは現状維持の一方、内政をはじめ具体的政策では、現状からの修正を目指す「よりよき統治」を基本に据えるというものである。

 こうして野党第一党である立憲民主党の進むべき方向は明らかになる。それは「一度ついた左寄りのリベラル政党というイメージを発展的に脱却し、中道の有権者にどのようにアプローチしていくか」にある。長年日本政治を観察してきた筆者にとっても、著者の主張は十分説得力がある。この書は30年余にわたって政界再編劇を主導してきた小沢一郎氏の政治手法とその功罪を考えるうえでも極めて有益である。

読売新聞
2021年8月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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