戦後沖縄と復興の「異音」 謝花直美著

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戦後沖縄と復興の「異音」

『戦後沖縄と復興の「異音」』

著者
謝花 直美 [著]
出版社
有志舎
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784908672491
発売日
2021/06/30
価格
2,860円(税込)

書籍情報:openBD

戦後沖縄と復興の「異音」 謝花直美著

[レビュアー] 橋本倫史(ノンフィクションライター)

 那覇にはかつて、新天地市場と呼ばれる衣料品の市場があった。「戦争未亡人」たちは洋裁を学び、ミシンで衣服を作って売り始める。最初は立ち売りだった商いが、やがて市場となり、街は復興してゆく――。

 この記述に誤りはない。ただ、完全な記述とは言えない。復興期も遠い昔になりつつある今、当時を知らない世代が振り返ると、廃虚から見事に復興を遂げてゆく時代は、貧しくも活気に満ちた時代に見える。時にはノスタルジーさえ呼び起こす。だが、復興の裏側には、歴史に記述されてこなかった生活者の声がある。それが「異音」だ。

 沖縄タイムス記者で研究者である著者は、戦後沖縄に生きたひとびとの声に耳を澄ます。アメリカ人のメイドとなり、洋服を仕立てていた女性は、「生活のために働くけど、気持ちまではとられない」という言葉を残す。生き延びるため抵抗を選べなかった人が発するつぶやきが、ここにある。

 ひとりひとりの声が「異音」となったのは、耳を傾ける人がいなかったせいだろう。丹念な調査と取材から、戦後沖縄の声がポリフォニックに浮かび上がる。(有志舎、2860円)

読売新聞
2021年8月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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