『世界の美しい病院 ― その歴史』
書籍情報:openBD
石田純郎著 「世界の美しい病院―その歴史」
[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)
医師で医史学も研究する著者が、世界の病院建築を訪ね、写真とともにその歴史をたどる。対象地域は欧米、大洋州、中東やアジア全域にわたり、時代も古代、中世から近代病院に及ぶ。
古代ギリシャでは医の神の神殿で治療も行った。中世欧州では、病人・困窮者を収容する宗教施設の修道院が病院であった。聖職者が看護師となり、ワイン・ビールも製造した。他に王侯・都市・富豪が営む病院もうまれ、感染病患者の隔離施設ペスト・ハウスなども市外に営まれた。のちこれらは大学病院となり、18世紀末には病人を治療する近代的病院が広がる。日本では近世からの病院や戦前植民地の病院を紹介する。
病院建築は清潔・機能性と宗教的聖性が特徴で、教会・庭園と一体で美しい建物が多い。著者撮影の建物の外観・内部の写真は、魅力的。歴史から病院の理想像を考える契機となろう。(吉備人出版、2750円)