現実の国際問題も取り入れた第一級のアウトドア冒険小説

レビュー

3
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機龍警察 白骨街道

『機龍警察 白骨街道』

著者
月村 了衛 [著]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784152100450
発売日
2021/08/18
価格
2,090円(税込)

書籍情報:openBD

現実の国際問題も取り入れた第一級のアウトドア冒険小説

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 新型コロナ感染拡大の最中、五輪パラリンピックを強行した日本。その暴走ぶりは第二次世界大戦時の国家体制と少しも変わっていない、といわれる。そこで引き合いに出されるのが、ビルマ(現ミャンマー)から山越えにインド侵攻を図った陸軍のインパール作戦。兵站無視の無謀な作戦だったうえ中止が遅れ、退却する兵士たちは餓えや病で続々と倒れ山道は屍で埋め尽くされたという。

 人体を模した軍用有人兵器体系、機甲兵装が普及した近未来の警察小説シリーズ最新作は、警視庁特捜部がよりによってその“白骨街道”に派遣されることになる。

 官邸に呼び出された特捜部長の沖津は思いもよらぬ密命を受ける。軍事機密を国外に持ち出した国内最大の重工業メーカーの社員がミャンマーで拘束された。その身柄を引き取りにいけというのだ。その男君島がいる収容所は国軍とロヒンギャ救世軍等、武装勢力との対立が続く紛争地帯の只中にあった。そこで白羽の矢が立ったのが、最新型特殊装備・龍機兵に搭乗する三人の突入班員――姿俊之警部を始めとする三人の傭兵刑事であった。

 空路ミャンマー入りした三人は、通訳の外務省専門調査員・愛染ともども現地の警察部隊と合流、難敵が潜む山間部へと向かう。その頃、一連の案件に特捜部つぶしを謀る警察の黒幕〈敵〉の動きを察した沖津たちも君島の背景を探り始めるが……。

 機龍警察初の本格的海外出張篇であるが、注目は何といってもその出先。クーデターやロヒンギャ難民問題で今まさに揺れている国であるところが凄い。かの地の知られざる現実がまざまざと伝わってくるのだ。

 やがて次から次へと危機に直面する突入班の三人。今回龍機兵の出番はないけど、思わぬ人物の飛び入りもあって機甲兵装活劇には事欠かない。スパイ劇や陰謀劇の面白さもあるが、ここはやはり第一級のアウトドア冒険小説として堪能されたい。

新潮社 週刊新潮
2021年9月9日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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