アレクシエーヴィチとの対話 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、鎌倉英也、徐京植、沼野恭子著

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アレクシエーヴィチとの対話

『アレクシエーヴィチとの対話』

著者
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ [著]/鎌倉 英也 [著]/徐 京植 [著]/沼野 恭子 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784000614788
発売日
2021/06/29
価格
3,190円(税込)

書籍情報:openBD

アレクシエーヴィチとの対話 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、鎌倉英也、徐京植、沼野恭子著

[レビュアー] 木内昇(作家)

 この夏開催された東京オリンピックで、ベラルーシの陸上選手が亡命したことは記憶に新しい。ソ連時代の戦渦と連邦崩壊の波に翻弄(ほんろう)され、チェルノブイリ原発事故によって深刻な被害も受けたこの地に育った著者が、戦争や原発の犠牲になった市民=小さき人々の声をすくいあげ、綿密に紡いでいったのは、いわば必然だったのだろう。

 戦争を女性の視点から描いた『戦争は女の顔をしていない』には、いわゆる英雄は登場しない。『チェルノブイリの祈り』では、大量の放射性核種を含んだ「死の灰」が降り注いだベラルーシの人々に、不可解な死が訪れる様子が克明に描かれる。2015年、ノーベル文学賞を受賞した彼女が、いかに悲惨な現実と向き合い、根気強く人々から言葉を引き出したか。本書は対談や講演録を織り交ぜつつ、ノンフィクション作家としての、その揺るぎない姿勢を明らかにしていく。

 「国家は人間の命に対して完全に責任は負わないということです。最低限のことしかせず、あとは『好きにしなさい』です」

 福島を訪れた彼女の感慨が、実感として重く響く。(岩波書店、3190円)

読売新聞
2021年9月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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