きみが死んだあとで 代島治彦著 晶文社

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きみが死んだあとで

『きみが死んだあとで』

著者
代島治彦 [著]
出版社
晶文社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784794972699
発売日
2021/06/29
価格
2,530円(税込)

書籍情報:openBD

きみが死んだあとで 代島治彦著 晶文社

[レビュアー] 仲野徹(生命科学者・大阪大教授)

羽田闘争 その後の証言

 高校時代に活動を共にした友人が大学1回生の秋に亡くなった。いや、殺された。その最大の理由は、高校時代の活動の延長上にあるものだった。残された人たちはどう生きたか。

 フィクションではない。京大生・山崎博昭は、1967年10月8日、第一次羽田闘争で殺された。公表された死因は装甲車による轢死(れきし)だが、機動隊による頭部乱打の目撃証言が数多くあった。山崎の大阪府立大手前高等学校時代の同級生8名――詩人の佐々木幹郎や芥川賞作家の三田誠広もいる――を中心に、兄や当時の関係者らを含めた14名のインタビュー集だ。

 懐かしむように、振り絞るように、あるいは苦悩を吐き出すように語られていく。そのいずれもから、山崎が素晴らしい若者であったことが伝わってくる。学生運動への参加には、イデオロギーそのものだけではなく、人間関係が色濃く影響していたというのが意外だった。

 まったくの私事だが、同じ高校の8年後輩にあたる。読書委員会でこの本を手に取ったのはそれが大きな理由だった。そんな私的なことで書評を書くべきではない、取り上げることはないだろうと思いながら持ち帰った。

 読み始めると、すぐに引き込まれていった。山崎の死を契機に学生運動に飛び込んでいった者もいれば、一歩身を引くようになった者もいた。もし自分がそのような立場にあれば、いったいどうしていただろう。想像することすら難しい。しかし、この本には、若さにまとわりついた普遍的な問題が数多く込められている。そう考え直して書評を書くことにした。

 最終章には大手前高校の先輩で東大全共闘代表だった山本義隆のインタビューが、本の最後には日大全共闘議長だった秋田明大を取材した内容が載せられている。半世紀という時の流れは単に長いだけではない。どこかで何かが完全に断絶してしまっているのではないか。そう考え込まざるをえなかった。

読売新聞
2021年9月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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