安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010 「基盤的防衛力構想」の時代 千倉書房 / 戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで 千々和泰明著 中公新書

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安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010

『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010』

著者
千々和 泰明 [著]
出版社
千倉書房
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784805112328
発売日
2021/06/08
価格
6,050円(税込)

書籍情報:openBD

戦争はいかに終結したか

『戦争はいかに終結したか』

著者
千々和 泰明 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784121026521
発売日
2021/07/20
価格
1,012円(税込)

書籍情報:openBD

安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010 「基盤的防衛力構想」の時代 千倉書房 / 戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで 千々和泰明著 中公新書

[レビュアー] 国分良成(国際政治学者・前防衛大学校長)

学術と啓蒙 同時に上梓

 安全保障分野の若手研究者が2冊ほぼ同時に内容の異なる著書を上梓(じょうし)した。1冊は日本の防衛政策史に関する学術書で、もう1冊は戦争の終結パターンを類型化した新書版の啓蒙(けいもう)書である。

 1冊目。日本の安全保障政策は、ここ10年で「脅威」「懸念」を明確に規定し、自衛隊の実際の「運用」も重視されるようになった。だが振り返ると、日本の安全保障政策は1970年代から2010年まで「脅威」を設定しない「基盤的防衛力構想」に立脚していた。なぜこれが冷戦~新冷戦~冷戦後と延々と続いたのか。

 著者によれば、同構想は従来言われるように防衛事務次官の個人的アイデアではなく、防衛庁内局で作られた構想で、一定の「脅威」を想定し、最小限の対処行動を取りうる余地を残した、そもそも「脱脅威」とは言えない面があった。それゆえにこそ、同構想はその後も拡大解釈のなかで生き延びた。

 本書の斬新性は、安保政策を自主防衛か日米同盟かといった単純な2分法ではなく、「脅威」か「脱脅威」をめぐる政官側と制服組の論争という別の切り口の重要性を示唆したことにある。

 2冊目。従来、戦争の原因についての研究は多いが、いかに終結したかの研究は少ない。そこで著者は、先行研究を駆使して20世紀以降の各戦争の終結パターンを明快に分類している。

 著者によれば、戦争の優勢側が「紛争原因の根本的解決」を求めれば「現在の犠牲」が増大し、「妥協的和平」を求めれば「将来の危険」が残る。前者の例としては、第2次大戦における連合国のナチス・ドイツへの対応、イラク戦争など、それに第1次大戦と太平洋戦争もそれに近かった。一方、後者の例としては、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争などが当てはまると言う。

 戦争終結のパターンを類型化することが今後の平和構築にどう資するのか、研究の深化に期待したい。ともあれ、防衛・安全保障分野にスケールの大きな若手研究者が登場したことを喜びたい。

読売新聞
2021年9月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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