「怒り」を整理して、上手に気持ちを伝えるアンガーマネジメント術

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「怒り」を整理して、上手に気持ちを伝えるアンガーマネジメント術

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

怒りにまかせて怒鳴ったり、口論になったりした結果、「なぜ怒ってしまったんだろう」と悔やんでしまうようなことはあるものです。しかし、「怒ってしまったこと」を必ずしも後悔する必要はないのだと、『もう怒りで失敗しない! アンガーマネジメント見るだけノート』(安藤俊介 監修、宝島社)の著者は主張しています。

なぜなら、 “そのままにしたくない理由”があって怒ったのだから。むしろ後悔すべきは、「怒りにふりまわされてしまったこと」。したがって、怒りのままに行動しないようにすれば、怒りで失敗することはなくなるわけです。

なかなか難しそうではありますが、しかしアンガーマネジメントなら、無理のない方法でそれを実現できるのだとか。著者自身も、理論がおもしろく合理的なアンガーマネジメントに魅了され、怒りをコントロールすることができるようになったのだそうです。

アンガーマネジメントを身につけると、家族関係だけではなく、職場やプライベートでも、人間関係がラクになります。

不必要なことに腹が立たなくなり、言うべきときには不満を上手に伝えられるようになります。

相手が怒ってきても、それに反応して感情的にならなくなります。そうなれば人生の負担はぐっと減ります。(「はじめに」より)

そのために必要なのは、まず「怒り」について知ること。知れば知るほど、「怒りは味方にできる」ことを実感できるようになるのだといいます。

そうした考え方に基づく本書のなかから、きょうはChapter 8「シーン別 気持ちの上手な伝え方」のなかからいくつかをピックアップしてみたいと思います。

信頼している相手に嫌なことをされたとき

相手のことを信頼していればいるほど、怒りは生まれやすくなるものです。

簡単な話で、「この人ならきっとだいじょうぶだろう」と感じている相手に対しては、「これくらいは当然やるべき」という思考が働きやすいからです。

たとえば、ずっと一緒にやってきたビジネスパートナーにないがしろにされたとしたら、多少なりとも悲しい気持ちになってしまうはず。それがきっかけとなってネガティブな感情が生まれ、やがて怒りに変わってしまうというケースも考えられるでしょう。

そこで、悲しい気持ちから怒ってしまったときには、「なにについて悲しいと感じたのか」を伝えることが大切なのだと著者は主張しています。

怒りにまかせて感情的になってしまうと、相手の神経を逆撫でするだけで、悲しい気持ちは伝わらないわけです。

信頼している人に嫌なことを言われたときは「よい関係が築けていると思ったのに、そんなことを言われて悲しい」、約束を破られた場合は「信頼していた分、悲しいし、今後の仕事に不安を感じる」と、どんな理由でどう感じたのかを伝えるようにしましょう。(175ページより)

信頼していたこと、悲しい気持ちにさせたことが伝われば、相手に自分の気持ちを理解してもらいやすくなるということです。(174ページより)

成果を認めてもらえなかったとき

本気で努力したのであれば、評価されなかったときの悔しさは倍増して当然。

「なんであいつが認められて俺は認められないんだ」「ここまでやったのに、評価する人たちはなんて見る目がないんだ」と、悔しい気持ちがやがて怒りに変わっていく可能性もあります。

しかし、怒りにふりまわされてしまうのは危険。つい相手をおとしめる発言をしてしまったり、負け惜しみを口にしたりして、逆に自分の評価を下げてしまうことも考えられるからです。

悔しい気持ちをバネにして活力へと変えられればよいものの、なかなかうまく切り替えられる場面ばかりではないでしょう。そんなときは、他人のことは話題にせず、自分の悔しさを潔く伝えます。

嫉妬してしまいそうな評価を受けた人にたいしては、「私もがんばったのに、正直悔しいな」と、相手の評価への不満は話さずに素直な気持ちを伝えましょう。

自分の努力を相手が認めてくれるかもしれません。また、納得できない評価をした人にたいしては、「成果を出してきたはずなので、評価されないのが悔しいですし、困惑しています」と評価への不満ではなく自分の気持ちを伝えます。(176〜177ページより)

そうすれば、波風を立てることなく“悔しい自分の気持ち”を伝えることができるわけです。(176ページより)

人格を否定されるようないいかたをされたとき

怒りをぶつけがちな人のなかには、自分の弱さを守ろうとするため、無意識のうちに攻撃性の高い言動をするタイプがいます。そういう人は相手を威圧して自分の価値観を押し通そうとするため、相手の人格を否定するような発言をする場合があるもの。

たとえば「あなたはこういうところが本当にダメ」と、できごとではなく相手自身を否定することで優位に立とうとするということ。しかし、いきなりそんなことをいわれた相手は、予想外のことに戸惑ってしまうはずです。

そのため困惑してしまい、思わず激怒してしまったり、ことばを失ってなにもいえなくなってしまったりするわけです。

こちらも怒ると言い争いになってしまいますし、何も言わないと相手はさらに攻撃性を高めます。

相手から急な人格批判をされたときは、落ち着いた態度で困惑していることを伝えましょう。(179ページより)

「急にそんなことをいわれて、なんといってよいか戸惑っています」と冷静に伝えると、相手は我に返るか、もしくは優位に立とうとした思惑が失敗したことから困惑することになるわけです。

相手の感情に飲まれないようにしつつ、お互いを尊重するコミュニケーションを心がけることが大切だという考え方です。(178ページより)


「見るだけノート」というだけあってイラストも豊富。怒りについて知っておきたいことが、簡潔にまとめられています。怒りで失敗した経験のある人は、その怒りを味方にするためにチェックしてみてはいかがでしょうか?

Source: 宝島社

メディアジーン lifehacker
2021年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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