女性に優しいあの男による初心者に優しい政治入門書

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国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。

『国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。』

著者
宮崎謙介 [著]
出版社
徳間書店
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784198652487
発売日
2021/07/01
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

女性に優しいあの男による初心者に優しい政治入門書

[レビュアー] 今井舞(コラムニスト)

 史上初「不倫で国会議員を辞職した男」により上梓された本書。

 政界入りを決意したのは、学生向けビジネスを起業した際、若者の日本社会に対する失望を目の当たりにしたのがきっかけだという著者。同じ頃、加藤紘一の娘と結婚・離婚していた経歴を一切ないものとしているのが少々引っかかるが。現在は企業コンサルタントとして成功を収めているという彼が、この本で訴えたかったのは「政治を知っていると得をします」。年配者から一目置かれ、ビジネスにも活かせ、女性にもモテます、だそう。いかにも著者らしい掴みで始まる本書は、市井の人々の多くが政治に全く関心がないことへの歯がゆさで書き始めたという。

「右」「左」「保守」「革新」「リベラル」などの、ニュースに当たり前に出て来る、でも政治オンチはスルー必至なレベル0の用語の平易な解説から始まり、衆議院をセ・リーグ、参議院をパ・リーグに例えるなど、しくみの解説も無知にも理解しやすい噛み砕き方。コンニャクの関税が「40%+キロ当たり2796円」と、べらぼうに高いのは何故なのかを実例に、「政治に与するとあなたも得するかも」を説き明かし。テレビ中継されている国会はパフォーマンス用、日本が外交に弱いのは「地元まわり」優先のせい、民主党の崩壊に見る官僚との付き合い方、コロナ禍のパチンコ業界を例に出してのロビー活動の叙説etc.……。

「経験者」ならではの着眼点による解説は、どれも意外と興味深い。官房長官時代の強気が菅首相から消えた理由を、党派閥から推測したりと、タイムリーな話題も豊富。初心者だけでなく、玄人が読んでもそれなりに楽しめる。子供の政治入門書にもいいかも。

 配慮が必要な人が身に付ける「ヘルプマーク」の普及や、無駄な支出1400億円の削減等、議員時代の業績についての述懐もあり。持ち前のフットワークの軽さを活かし、それなりに仕事していたことも判明。その活かし方さえ間違えなければ……。本書を子供に渡す際は、著者がどうして政界を追われたのかも説明しておこう。そこも含めて、イチから勉強ってことで。

新潮社 週刊新潮
2021年9月30日秋風月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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