ドラマ「民王」プロデューサー・飯田サヤカが読む、待望の続編『民王 シベリアの陰謀』(著:池井戸潤)

レビュー

10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

民王 シベリアの陰謀

『民王 シベリアの陰謀』

著者
池井戸 潤 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041117170
発売日
2021/09/28
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

ドラマ「民王」プロデューサー・飯田サヤカが読む、待望の続編『民王 シベリアの陰謀』(著:池井戸潤)

[レビュアー] 飯田サヤカ(ドラマプロデューサー)

■やはり「民王」は手ごわい。――待望の続編『民王 シベリアの陰謀』を飯田サヤカさんに読んでいただきました

「下町ロケット」「半沢直樹」シリーズでおなじみの池井戸潤、待望の最新作は、ドラマでも大人気を博した「民王」の続編!
ドラマ「民王」(2015年放送)のプロデューサー・飯田サヤカさんに、最新作『民王 シベリアの陰謀』を一足先に読んでいただきました。

■『民王 シベリアの陰謀』(著:池井戸潤)書評

■評者:飯田サヤカ(テレビ朝日プロデューサー)

「そうだ……『民王』って、コレだったわ……!」

それが『民王 シベリアの陰謀』のゲラを吸い込まれるようにして読了した時、脳内に浮かんだ一言だ。

というのは、自分の中で「民王」という作品とはなんだったか、深く関わらせていただいた時期から6年の月日が流れ、おそらく記憶が補正・改ざんされ脳内で少し違うものとして定着してしまっていたのだった。

2015年にテレビ朝日で放送したドラマ「民王」は視聴率が良かっただけでなく、東京ドラマアウォード、ギャラクシー賞など数多くの賞を受賞した。そして出演してくれた俳優は、遠藤憲一さん、菅田将暉さん、高橋一生さんらがみな大ブレイクし、今日もスターとして映像作品で見ない日はないほどの活躍ぶりだ。そして池井戸先生の小説はその後も大ヒット連発、映像化作品も次々とヒットした。ドラマ「民王」は放送後6年経っても未だに配信数も好調、海外にも販売され(つい先日はザンビアに売れたと連絡があった。ザンビアからもオファーが!)、要はこれまで、沢山の箔がつき、いっぱしのヒット作の顔をするようになったのだった。

だからなのだろうか……?

自分では気が付かぬうちに、「民王」がもっと品が良く、もっとおさまりが良く、当世トップの文豪が記した(わけだから当然)もっとなんというか真剣でヒューマンな(?)政治小説……といった、要はちょっと「真面目な」作品だと記憶が補正されてしまったのだった。

違う違う! 全然そうじゃないんだった!!

というのを『民王 シベリアの陰謀』を読んで、思い出したのでした。

民王 シベリアの陰謀 著者 池井戸 潤 定価: 1,760円(本体1,...
民王 シベリアの陰謀 著者 池井戸 潤 定価: 1,760円(本体1,…

もともと「民王」は四方八方、各方面に対し「怒られ上等!」の超辛口小説だった。

今より6歳若い自分が、今より6歳若い心意気で挑んだ小説「民王」の映像化の際、「未曽有の危機」が読めない総理大臣、本質から外れっぱなしの政治論争、なんならバカでもピュアな大学生が政治やった方がいいんじゃないの? という痛烈な皮肉と風刺を効かせた原作小説に惚れ込み、これは深夜枠だし会社も(私に対して)大して期待はしてなさそうだし、誰かに止められるまでどんどんやっちゃおうと判断し、原作の悪口エッセンスはそのままドラマに生かしたのでした。
遠藤憲一さん演じる翔が国会答弁のシーンで「このくには、みぞうゆう(未曾有)のききにじかめん(直面)し」と演説してヘラヘラ笑うシーンを放送した後、さすがにクレームがくるかもな、ドキドキ案じて結果こなかったときにほっとしたのを思い出します。(意外と政治家は寛容なのか、いや見ていないだけか)
現場自体も今思い出すと、木村ひさし監督、遠藤さんや菅田くん、一生さんはじめ、みんなが子供が悪戯を仕掛けるような遊び心でいつも「やっちゃえ感」が溢れている、そんな現場でした。
「民王」はそもそも、言っちゃいけないんじゃないの? 言っていいのそれ? の、ギリギリのギリを攻めている。昨今増大する一方のコンプライアンス? 忖度? そんなものはどこへやら。
子供が自家中毒気味の大人たちの悪口を無邪気に言うような、その辛口っぷりが最高に痛快でワクワクする魅力だったのでした。

『民王 シベリアの陰謀』は、そんな民王の「怒られ上等」「やっちゃえ感」の悪戯心があの時のまま、時代を超えてやってきた、各所への失礼発言満載の抱腹絶倒ギャグ風刺政治小説です。決して真面目な小説ではありません。

池井戸先生は、今度はこの1年半の間、コロナ禍JAPANにおいて流れていた、どこか大騒ぎしながらも本質に誰も触れてない空虚な右往左往、毎日大の大人が大真面目にやっているけどなんだか全てそれがギャグみたいに見えている、そんな世の中の空気を丸ごと大爆笑の小説にまとめあげてしまわれた。

真剣にふざけた毒舌小説で、最高に面白いです。

やはり「民王」は手ごわい。
そして、こうこなくては!

KADOKAWA カドブン
2021年09月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

  • このエントリーをはてなブックマークに追加