お願いして書いてもらいました! リクエスト・アンソロジー第三期刊行! 『朝倉かすみリクエスト! スカートのアンソロジー』まえがき特別掲載
レビュー
お願いして書いてもらいました! リクエスト・アンソロジー第三期刊行! 『朝倉かすみリクエスト! スカートのアンソロジー』まえがき特別掲載
[レビュアー] 朝倉かすみ(小説家)
編者が、今いちばん読みたいテーマで、いちばん読みたい作家たちに「お願い」して書いてもらう、「下から目線」の新作アンソロジー・シリーズ、待望の第三期が刊行されました。
超豪華ラインナップがそろった、本好き垂涎の二冊、まだお読みでない方のために、おふたりの「まえがき」をご紹介します。
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たいへんにまぁ幸せな仕事をさせてもらった。
わたしは、わたしの好きな作家たちに、わたしの決めたお題でもって小説を書いてもらったのだった。
いや、光文社のスズキさんという人から話を持ちかけられたときは、だいぶ困惑した。正直、イヤだった。
わたしはどちらかというと、好きな人、憧れの人とはなるべく関わりを持ちたくないほうだ。物陰からそっと「好きだな……」と覗(のぞ)き見する、そんな距離感が望ましい。できればその人たちの視野にすら入りたくない。だって、ちょっとでも認知されると、その人たちに嫌われる可能性が発生する。そう、ことこの件に関して、わたしは信じられないくらい卑屈である。なんならいくらでも卑屈になれる。
それでも話を受けたのは、それが夢のようであったからだ。
千載一遇レベルのチャンスと思えたからである。
わたしの好きな作家たちは、わたしの考えたお題をおもしろがってくれるだろうか。
わたしの好きな作家たちは、それぞれの作品とわたしの書いたのが一冊の本に収録されるのを不快に思わないだろうか。
※わたしだって併録されるのは気が重くてならないが、それがこのアンソロジー制作の条件だとスズキさんが言うのだった。
ほかにもいろいろ、ちいさいあぶくみたいな不安や心配が胸にあがってきてはプチプチ弾(はじ)けたりしたのだけれど、「小説宝石」での掲載が始まったら、そんなの、ぜんぶ、吹っ飛んじゃった! わたしの胸のグズグズなんて、ほんと、どーでもよくなった。毎回、胸が高鳴り、読む喜びをぞんぶんに味わった。その喜びが分厚くなっていく。「スカート」というお題で、みんなで遊んでいる感じ。待って、楽しい。なにこれ。
だから、一冊にまとめるにあたっては「小説宝石」掲載順にした。
およそ一年、ほぼ月一ペースで読んだわたしの興奮が、どうか伝わりますように。