〈趣味〉としての戦争 戦記雑誌『丸』の文化史 佐藤彰宣著

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〈趣味〉としての戦争

『〈趣味〉としての戦争』

著者
佐藤 彰宣 [著]
出版社
創元社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784422202969
発売日
2021/06/22
価格
3,080円(税込)

書籍情報:openBD

〈趣味〉としての戦争 戦記雑誌『丸』の文化史 佐藤彰宣著

[レビュアー] 苅部直(政治学者・東京大教授)

 月刊誌『丸』は、いま刊行されているミリタリー雑誌のなかでは最も歴史が古く、終戦直後の創刊である。学校教育で反戦・平和主義が支配的になり、軍事に興味をもつことが白い目で見られてしまう戦後社会で、この雑誌はどのようにして人気を保ってきたのか。その「文化史」をたどった本である。

 「丸」という題名は、特定の立場に偏らない総合雑誌という創刊当初の方針に由来する。だが占領の終結により検閲がなくなった時期から、日本軍の活躍を再評価する戦記特集雑誌に転換した。

 新しい方針は、学校教育に反発し、メカとしての戦闘機や軍艦に関心をもつような、若い世代をも惹(ひ)きつけることになる。他面でまたベトナム戦争の時期には、自衛隊に懐疑的な「革新軍事評論家」の寄稿も集め、独特の誌面を作っていた。

 『丸』も含め現在のミリタリー雑誌は、戦争と兵器に関する趣味的情報に集中しているが、そうではない時代もあったのである。その変遷の歴史は、いまの日本で多くの方向から軍事について論じあうことの難しさを、改めて考えさせる。(創元社、3080円)

読売新聞
2021年9月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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