いつか世界へ翔ぶために

レビュー

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なぜ世界を知るべきなのか

『なぜ世界を知るべきなのか』

著者
池上, 彰, 1950-
出版社
小学館
ISBN
9784092272859
価格
990円(税込)

書籍情報:openBD

いつか世界へ翔ぶために

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 小学館は、中高生向けに新たな新書レーベルを立ち上げた。池上彰『なぜ世界を知るべきなのか』は、ここから登場した一冊。

 近年、海外留学者の減少など、若者の内向き志向が指摘される。そこにやってきたコロナ禍のおかげで、ますます外へ目が向かない傾向が強まった。しかしステイホームの今こそ準備期間とし、いつか世界の動きを自分の目で見つめてくるべし、と著者は若人を鼓舞する。若い世代の視線に合わせた語り口は、もともとNHKの「週刊こどもニュース」の解説役として活躍し、講義や授業などもこなす著者ならではだ。

 各国の国情に合わせたコロナ対策、タリバンの活動理由、故中村哲氏のアフガニスタン支援など、何となく聞いてはいるが詳しくは知らない事柄の解説は、さすがの切れ味。学校教育でおろそかにされがちな日本と世界の近現代史がいかに重要なものであるかも、改めて考えさせられる。

 本書で最もメッセージ性が強いのは、マララ・ユスフザイ、グレタ・トゥーンベリ、周庭という、世界を動かす若い女性活動家を取り上げた章だろうか。ごく普通の少女であった彼女たちが、「声を上げる」ことによって世界を動かす存在へと成長していく過程は、多くの少年少女に勇気を与えるだろう。

 若者向けと書いたが、もちろん大人が読んでも大いに学ぶところがある。子供にプレゼントし、親子で話し合いながら読んでみてはいかがだろうか。

新潮社 週刊新潮
2021年10月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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