『いち福 小さなだんご屋のはなし』
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<東北の本棚>名店受け継ぐ家族の絆
[レビュアー] 河北新報
父がすし職人から転職して始めただんご屋を、長男、長女、次男の3きょうだいがセカンドキャリアとして受け継いだ。創業35年目。仙台市若林区の名店「仙臺だんご いち福」を巡る家族の絆の物語を、末っ子の著者が記したノンフィクション。
「やりたいことをやりなさい」「決めたことは身に付くまでやりなさい」という父の教え通り、長男はバーテンダー、長女はパン職人、著者は美容師の道を歩んだ。2007年に父が倒れ、長女が店を手伝い始める。
東日本大震災時は4日後から店を開け、父を中心に家族で在庫のコメを使い必死におこわなどを作り続けた。のれんを上げてお客さまと対面することが、何より家族の心の安定につながったという。
その数カ月後、父のがん闘病を機に、長男がいち福の一員に。著者は、美容専門学校の教師を全うし、15年にメンバー入りした。
父亡き後、3きょうだいは合同会社を立ち上げ、前職を生かしたアイデアを取り入れながら、新しい「いち福」を追求し続ける。その一方で、父がこだわった、ササニシキを蒸して作るだんごの味はかたくなに守る。だんごを味わいたい。読後、いち福に走りたい気分になる。(郁)
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