つながり続けるこども食堂 湯浅誠著 中央公論新社

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つながり続ける こども食堂

『つながり続ける こども食堂』

著者
湯浅 誠 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784120054389
発売日
2021/06/09
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

つながり続けるこども食堂 湯浅誠著 中央公論新社

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

困窮支援 市井の中の解

 こども食堂とは困っている子もそうでない子も一人でも安心して行けて、年齢が異なる子たちで遊び、親も立ち寄り、大人やお年寄りとの「多世代交流の地域拠点」であるという。運営者は自治体ではなく地域の住民。全国に4960箇所ある。著者の湯浅誠氏はNPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。全国のこども食堂を回り子ども達(たち)の声や携わる人々の大らかな声を拾ったやわらかなルポとともに、子どもの貧困対策や高齢者の諸問題の解決策として「つながりの提供」の必要性を提言する。読み進めるうちにこども食堂の光景と存在は決して他人事ではなく、超少子高齢化社会や多発する災害でいつか誰もが直面する困難と「つながり」の行方を考えることになる。

 コロナ禍ではこども食堂も開催を中止せざるを得なくなった。しかし運営者たちは「大変かもしれない誰か」を常に想像し、食料配布やフードパントリーなどで継続したところもあった。自粛の風潮の中で近隣の厳しい視線に「暮らしに不可欠な場」として定着していなかったことを噛(か)みしめる。だが「波のないところで波を立てた」活動により支援が起こり、「動く」ことの効果を著者は実感する。そしてコロナ禍を契機に、自治体の広報協力や厚労省の政策にこども食堂が入ったこと、「居場所開催」よりも配布活動によって困っている人(家庭)が見えやすくなったこともあったという。食を届け声を聞く現場の人の「一人では無いことを伝えていければ」という一行に胸が熱くなった。

 また災害が起きた地でこども食堂が増え、ノウハウが次の非常時の支援に生かされたことに著者は「市井の人々の選択の中にこそ、社会の解を見出すべき」と述べる。まさに真実であり本質である。こども食堂をはじめ「官民協働」を目指す場は少なくない。「民」の心がつなげた活動とその可能性を提示した本書はアフターコロナの暮らしと心に向けて大切で力強い。

読売新聞
2021年9月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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