岩井勇気×ジェーン・スー・対談「エッセイを書くことの“出口”って?」
[文] 新潮社
初小説は“ほぼほぼエッセイ”
スー 今作では初めて小説も書かれたのですよね。「僕」が表の世界から裏の世界に行ってしまう不思議な設定なのに、細部のリアリティがすごく丁寧に描かれていてとても面白かったです。
岩井 ありがとうございます。さも当たり前のように、担当者から「次は小説を書いて下さい」って言われたので書きました。
スー あはは!(笑) エッセイでとれる賞が今はほとんどないからなのか、編集者は小説を書かせたがりますよね。困る。
岩井 それが問題なんですよ。エッセイの「出口」って何だ? 何を目標にして書いていけばいいんだ? ってわからなくなっています。
スー 我々の場合、すべって転んだって話を書いて何万円かもらえるわけですから、こんなにいい仕事はないとも思いませんか?
岩井 それ、一番騙されてます! 例えばそのエピソードを小説に変換して書くと多分もっともらえるんですよね? 書く労力としてはそれほど変わらないだろうに、小説の方がエッセイより上なのかって段々腹が立ってきて。そもそも小説の書き方自体もよくわからないから、エッセイみたいな話を書いて「小説」ってつければそれでいいだろうという考えで書きました。だから強いて言えば、「エッセイも小説も一緒だぞ」と世間の意識を変えることが今後の目標ですね。
スー “エッセイ地位向上委員会”を立ち上げた!(笑) でも確かに、岩井さんも本人役でご出演して下さいましたが、私が父のことを書いたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』のドラマ化のお話を聞いたとき、「エッセイなのに実写化?」と驚きました。
岩井 いいドラマでしたよね、かなり話題にもなりましたし。
スー 原作に愛情をもって丁寧に作って頂けて、本当にありがたかったです。しかも映像化のお話を頂く前に「ジェーン・スーを実写化するなら、最上位変換で吉田羊さん!?」なんて私がラジオで馬鹿馬鹿しく話していたことを実現しても下さって。実際に吉田さんにお目にかかったらもちろん全然似てなくて、「役者さんってスゲー!」ってなりました(笑)。岩井さんの実写化って誰だろう?
岩井 以前クイズ番組で、「この中で長谷川博己さんでない人はだれ?」という問題で、一人だけ僕の写真があったことはありました。
スー なんちゅうクイズだ(笑)。30代くらいの俳優さんだと誰かな……成田凌さんとかどうですか?
岩井 いいですね~一番いい! 成田さんにお願いしましょう!
スー 雑誌の表紙なんかも一緒にやっちゃうし、成田凌ファンがラジオにメールくれたりもしちゃうかも。
岩井 エッセイでも楽しいことありそうですね(笑)。