【聞きたい。】くぼしまりおさん 『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』

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【聞きたい。】くぼしまりおさん 『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』

[文] 油原聡子

■80代母の装いを鮮やか色に

鮮やかなピンクのワンピース。丈の長いシャツのようなアトリエコートは、赤地に白の花柄。児童書『魔女の宅急便』の著者として知られる母、角野栄子さんのインスタグラムはファッションも人気だ。

そのスタイリングを手掛けている。本書は、色の組み合わせやアクセサリーの使い方、着脱のしやすさなどシニア世代の服選びのポイントを紹介している。

角野さんが80歳くらいの頃に「毎日のお洋服を考えるのが面倒」とスタイリングを依頼されたことが始まりだ。特徴は明るい色遣い。見ている方も幸せな気分になる。

角野さん自身は、茶系やグレーといったシックな色を選ぶことが多かった。しかし、カラフルな服は人の目に留まり、褒められる。角野さんも笑顔が増えていったという。

「私はもともと絵描きなので明るい色が好きなんです。海外生活も経験しましたが、おばあちゃまたちも明るい色を着ている。最初は母も鮮やかな色は『悪目立ちする』とためらっていましたが、でかけた先で歓迎されて、気分よく帰ってくるんですよ」

当初は苦労があった。年を重ねると体形も変わり、体の動きも変わる。ぴったりの服が既製品では見つからなかった。「色が暗いとか、若い女性向けの服をサイズだけ大きくしたようなものばかり。それなら、と洋裁のできる友人にお願いすることになりました」

スタイリングは母と娘の良いコミュニケーションに。「親も80代になると、『いざというときにこれはどこにある』とか、ネガティブな会話が多くなる。それが、『いいネックレス見つけたよ』とか、ポジティブな話題が増えました」

シニア世代がおしゃれを楽しめば、自分たち娘世代の未来も楽しくなる。

「母親は自分の未来図。シニア世代は地味な色の服という固定観念がありますが、明るい色を着てもいいということが伝われば」(角川書店・1650円)

油原聡子

   ◇

【プロフィル】くぼしま・りお

昭和41年、東京都生まれ。文化学院美術科卒。アートプロデューサー。子供向けの本の創作や翻訳を手掛け、イラストレーターとしても活躍している。

産経新聞
2021年10月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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