映像化で激突、さらに新作も 「銀河帝国もの」のツボは時代劇のノリ

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  • 銀河帝国の興亡1【新訳版】
  • デューン 砂の惑星〔新訳版〕 上
  • 帝国という名の記憶 上

書籍情報:openBD

映像化で激突、さらに新作も 「銀河帝国もの」のツボは時代劇のノリ

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

 最近、名作SFが続々映像化されている。9月24日に配信が始まったApple TV+の連続ドラマ『ファウンデーション』は、巨匠アイザック・アシモフが1940年代に発表した短編連作が原作。1万2千年続いた銀河帝国の滅亡を予言して辺境の惑星に追放された心理歴史学者ハリ・セルダンが、未来の人類のため、新たな文明のいしずえ(ファウンデーション)を築こうとする。

 ドラマ版は(2話まで観た限りでは)滅びゆく銀河帝国を9・11以降のアメリカと重ね合わせ、大胆にアレンジしているが、全3巻の原作『銀河帝国の興亡』(創元SF文庫)は、ドラマ化を機に鍛治靖子による新訳が進行中(他に岡部宏之訳のハヤカワ文庫SF版あり)。ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を下敷きに人類文明の興亡を未来史として描いたのが特徴で、田中芳樹『銀河英雄伝説』や劉慈欣『三体』3部作にも大きな影響を与えた。

 この“銀河帝国もの”の流れを受け継いで大輪の花を咲かせたのが、フランク・ハーバートの『デューン 砂の惑星』。こちらは60年代に発表されて若い世代に熱狂的に支持され、社会現象を巻き起こした。アメリカでは、この半世紀、オールタイムベストSF投票で不動の1位に君臨する。将軍に国替えを命じられた大名家が他家の陰謀にハマって辛酸を嘗める―みたいな時代劇ノリの話なので日本人にもなじみやすい。2016年に酒井昭伸による新訳版が出て、さらに読みやすくなっている。

 1984年にはデイヴィッド・リンチによる超クセがスゴい映画化も実現したが、今年10月にはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のリメイク版『DUNE』第1弾が劇場公開され、『ファウンデーション』と激突する。全体の造りはわりと正統派だが、オーニソプター(羽ばたき飛行機)とハルコンネン男爵の造形は必見。

 アーカディ・マーティーン帝国という名の記憶』上下(内田昌之訳、ハヤカワ文庫SF)は、昨年のヒューゴー賞に輝いた最新モードの銀河帝国SF。辺境から来た新任女性大使が皇位継承争いに巻き込まれる。

新潮社 週刊新潮
2021年10月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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