「1秒で心をつかむ」アナウンサー直伝のビジネス・交渉テクニック

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

「1秒で心をつかむ」アナウンサー直伝のビジネス・交渉テクニック

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

1秒で心をつかめ。一瞬で人を動かし、100%好かれる声、表情、話し方』(魚住りえ 著、SBクリエイティブ)は、コミュニケーションの間に生じる「特別な1秒」に焦点を当て、周囲の人に好印象を残す方法を掘り下げた書籍。

出会い頭の1秒、会話の最中の1秒などの“ほんのわずかな時間”が相手に与える印象、相手から受ける印象を大きく変えてしまうというのです。そこで本書では、著者がアナウンサー、ボイス・スピーチトレーナーとして培ってきた経験を生かし、好印象を生む「1秒」の秘密を解き明かしているわけです。

誰かとの深いつながりも、さかのぼっていけば始まりは「1秒」です。

「この日、なんか感じがいいな」と。

人と人とのつながりの結び目が強くなるか、解けてしまうかは1秒の印象で大きく変わります。(「Prologue」より)

もちろんそれは、ビジネスの場においてもいえることでしょう。

そこで、きょうは第2章「ビジネス・交渉の1秒 信頼させる」のなかから、3つのポイントをピックアップしてみたいと思います。

1. 商談の始まりは「いまここ」の1秒に集中

ビジネスシーンでのコミュニケーションにおけるもっとも重要なポイントは、会話の始まりの「いまここ」の1秒に集中すること。

・目の前にいるお客さんは、何を求めて、ここに来たのか

・商談相手は、何がしたくて、何をしたくなくて、ここにいるのか

・ミスをした後輩は、どういう気もちで報告にやってきたのか

・不機嫌そうな顔をしている上司にどう接すれば、こちらの提案に乗ってくれるのか

(60ページより)

このように、会話が始まる直前にほんの1秒だけ、相手の立場から「いまここ」を眺めてみることが大切だというのです。それだけで、コミュニケーションの仕方にポジティブな変化が生じ始めるのだといいます。

具体的には「私が」「こちらが」「当社が」と、こちらがしたいことを優先した会話の始め方が減り、「どうされましたか?」「お困りのことはありますか?」など、“相手を気遣うことば”が出てくるようになるそう。

つまり大切なのは、自分が話すよりも、相手の話をよく聞く意識を持つこと。自分が話したいこと(頭のなか)に集中するのではなく、「いまここ」の1秒に集中すべきだというわけです。(58ページより)

2. 一瞬で心をつかむ「お会いできてうれしいです」

人は誰しも、「自分を認めてほしい」という承認欲求を持っているもの。したがって、「気持ちよく過ごしてほしい」「いい仕事ができたと感じてほしい」と思う相手とよい関係を築くためには、その人の承認欲求を満たすことが早道。

では、どうすれば相手に「認められた」「認めてくれた」と思ってもらえるのでしょうか? この問いに対して著者は、「大原則は1つだけ。相手の話をきちんと聞いて、共感すること」だと答えています。

・相手の話を聞き、受け止め、素直に疑問に思ったことを質問する

・相手の話に「それは違う」と思ってもすぐにさえぎったり否定したりせず、まずは最後まで聞いて受け止め、感じたことを質問の形で投げ返す

(63ページより)

この流れを忘れずにいれば、ビジネスシーンで出会うどんな人とも上手にコミュニケーションがとれるそうです。

とはいえ、こちらが「聞く」という気持ちを持っていれば、いつでも相手がスムーズに話し始めてくれるわけではないのも事実。寡黙な人や口下手な人もいますし、たまたま相手の機嫌が悪いということだって考えられるからです。とくにビジネスシーンでは、必要最低限のコミュニケーションで済ませてしまうという面もあるもの。

それでももう一歩踏み込み、つながりをつくりたい、好印象を残したいと願うなら、“最初に相手の心をノックアウトするひとこと”が欠かせないのだといいます。

「今日はお会いできてうれしいです」

「ご一緒にお仕事できる機会を楽しみにしていました」

(65ページより)

たとえば著者の場合は、こうしたことばとともに「お話ししたいです」という気持ちを伝えるように心がけているのだとか。

すると、初対面時に漂う緊張感がほぐれ、その後のコミュニケーションが深く豊かなものになり、お互いの好印象につながっていくというのです。(62ページより)

3. 「でも」「いや」「逆に」、残念な最初の1秒に注意

「このあいだ、課長が提案していたプラン、可能性ありそうでしたよね」

「いや、どうかな。悪くない提案ではあったけど」

というように、賛成しているのに「でも」とつけ加えたり、同じ意見なのに「いや」と返したり、脈絡もなく「逆に」と目新しさを出したりすると、いわれた相手は少なからず抵抗を感じるもの。

そういった無意識のうちに出てくる否定語は、じわじわと積み重なって自分の印象をわるくしていくものなので早めに改善すべき。そう指摘する著者は、改善策として会話の録音を勧めています。

会議中の発言、上司とのミーティングのやりとりなど、自分がどんな会話をし、どう受け答えしているのかをチェックするわけです。

その結果、思った以上に「逆に」と口にしている自分、「でも」「いや」を連呼している自分、「いや、そうじゃなくて」と返しながら結局は同僚の意見に同意している自分にきづくかもしれないということ。

そうしたら、次は「でも」「いや」「逆に」を言い換えるトレーニングです。

やり方は簡単。「でも」「いや」「逆に」をすねて、「そうですね」に置き換えましょう。 言うべき必要があるときは「そうですね。でも〜」「そうですね。だけど、逆にこれは〜」という使い方にしていきましょう。 (88ページより)

いったん相手の話を肯定的に受け止める「そうですね」を挟むだけで、印象ががらりと変わるそうです。(86ページより)

ほんの一瞬で受けた印象から、人間関係が大きく変わっていくことはあるものです。だからこそ、本書を参考にしながら「1秒」を有効に活用すべきかもしれません。

Source: SBクリエイティブ

メディアジーン lifehacker
2021年10月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク