「トップ5%リーダー」に共通する、2つの意外な特徴

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「トップ5%リーダー」に共通する、2つの意外な特徴

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(越川慎司 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』の著者による最新刊。

1万8000人のビジネスパーソンを定点カメラ・ICレコーダー・GPSで調査、AI分析し、効率よく成果を出す人の共通点を明らかにした同書は、7万部超のベストセラーとなりました。

ただし、それはコロナ禍以前の調査に基づいたもの。そこで、本書の企画を思い立ったのだそうです。

私が代表を務めるクロスリバーは、その後も調査・分析を継続しています。

コロナ禍では対面での調査が制限されましたが、テレワークやオンライン会議など、行動履歴をデジタルで収集しやすくなり、大量のデータが貯まっていきました。(「はじめに」より)

そうしたデータに基づき、ウィズコロナの時代でもビフォーコロナ期以上に成果を出し続けている人の行動を分析しようと試みているのです。

本書の目的は「知ること」ではなく「できるようになること」です。

でも、最初から全部を実践しようと思わないでください。

なぜなら、人間の本能は未体験を拒みます。未体験は心地よくないのです。

ですから、未知の体験に心を開き、恐れずにちょっとだけ触れてみるのがいいのです。(「はじめに」より)

そんな軽やかなスタンスに基づいた本書の第1章「AIが突き止めた! トップ5%リーダーの意外な特徴」の中から、2つのトピックスを抜き出してみましょう。

トップ5%リーダーの59%は「歩くのが遅い」

クロスリバーでは2020年1〜3月期の緊急事態宣言前、5社に協力してもらってオフィスに定点カメラを設置して調査をしたそうです。デスク上のみならず、人の流れが活発なフロアの出入り口付近、オープンスペースなどに360度カメラを設置し、働いている人の様子を録画したというのです。

その結果、明らかになったのは“移動スピードの違い”。厳密に移動スピードを測ったわけではないものの、それでも明らかに速足で移動する人、他の人よりもゆっくり移動する人が検出できたということです。

興味深いのは、5%リーダーのうち59%の人が、明らかに平均よりもゆっくり移動していたという事実。しかもそれは、前著『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』とは逆の結果。つまり5%社員はせっかちで、歩くスピードは一般社員よりも早かったわけです。

ならば目的思考で無駄なことを嫌う5%リーダーも速く歩くという選択をしそうですが、結果的には他の人よりもゆっくり歩いていたというのですから意外です。

注目すべきは、理由を追求するため、ゆっくり歩く5%リーダーにアンケートを試みたところ、「意図的に時間と気持ちの余裕をつくるようにしている」と答える人が58%いたこと。つまり、それが歩くスピードに反映されていたのでしょう。

また5%リーダーは、自分が仕切る会議では時間内に終わらせることを厳守していたのだそうです。会議中に時間を確認する回数は他の管理職よりも2.8倍多く、時間ないどころか予定より早く終わらせようとしていたというのです。

また、会議改革に取り組む5%リーダーが多く、一般的な管理職の3倍以上の人が社内会議の量と質を改善しようとしていたのだといいます。

・30分の定例会議を25分に設定

・意思決定の会議は参加者数を絞る

・会議の冒頭でアジェンダと各参加者の役割を発表する

(46ページより)

などの改革を進めていたということ。

会議が予定どおり、もしくは早く終われば、時間と気持ちの余裕ができます。そうしたことが、ゆったりと余裕を持った歩き方に影響を与えているのではないか。著者はそう分析しています。(44ページより)

トップ5%リーダーの65%は「思いきった決断をしない」

管理職ともなれば、多くのことを決めていく力が求められます。さまざまなことを次々に決定していかないと、物事が前に進まないからです。この意思決定を避ければ、プロセスが長くなって現場のメンバーたちに負荷をかけることになってしまうでしょう。

5%リーダーは確実に意思決定をします。 実現可能性や投資対効果、インパクトや重要性など複数の評価軸を複合的に組み合わせ、ブレない信念を持って決断します。

8000時間におよぶオンライン会議の録画を見ると一般的な管理職と5%リーダーの違いは顕著でした。

条件は異なるものの、5%リーダーの決定数は約25%多かったのです。さまざまな案件に対して即座に意思決定をしています。(60〜61ページより)

たとえば、これまでやっていたことをやめる決断や、重要性が低いのでタスクを受けないといった決断をすれば、現場のメンバーへの負荷は大幅に減ることになります。そういったことを5%リーダーはよく理解しているのです。

「進むぞ!」と決断するのと同時に、「代わりにこっちはやめる」というトレードオフをしているということ。やる覚悟と辞める覚悟を持っているのが5%リーダーの特徴だというわけです。

リーダーには、多くの変数が取り巻く状況を加味しながら意思決定をする能力が求められます。

過去に成功したプロジェクトであっても、外部環境やトレンドの変更などがあれば、同じやり方で同じ結果が出るとは限りません。だからといって過去の経験を無視したり、まったく0からチャレンジすべきだということでもないでしょう。

しかし、彼らは一か八かの思いきった決断をしないことがわかりました。 5%リーダーへの度重なるヒアリングを通じて、意思決定は速いが、「少しでも望みがあればそれに賭ける」といった博打的な決め方をしないことがわかりました。(62ページより)

これもまた、興味深い調査結果だといえます。(60ページより)

決して難しい内容ではなく、あくまで“悩めるビジネスパーソンのショートカット本”。忙しくても無理なく行動と成果を変えられるようにと、再現性の高い仕事術がまとめられているのです。

できる上司のノウハウを身につけるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2021年10月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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