『証言・昭和の俳句 増補新装版』黒田杏子聞き手・編者(コールサック社)

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証言・昭和の俳句 増補新装版

『証言・昭和の俳句 増補新装版』

著者
桂信子 [著]/鈴木六林男 [著]/草間時彦 [著]/金子兜太 [著]/成田千空 [著]/古舘曹人 [著]/津田清子 [著]/古沢太穂 [著]/沢木欣一 [著]/佐藤鬼房 [著]/中村苑子 [著]/深見けん二 [著]/三橋敏雄 [著]/黒田杏子 [編]
出版社
コールサック社
ISBN
9784864354875
発売日
2021/08/05
価格
3,300円(税込)

書籍情報:openBD

『証言・昭和の俳句 増補新装版』黒田杏子聞き手・編者(コールサック社)

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

20年経て 新たな価値

 雑誌「俳句」に十八ヵ月かけて連載された十三名の俳人のロングインタビューをまとめ、約二十年前に角川選書から上下二巻で刊行された『証言・昭和の俳句』の増補新装版である。証言者は桂信子、鈴木六林男、草間時彦、金子兜太、佐藤鬼房――ゴージャスな顔ぶれだ。旧版ではインタビューの聞き手であった黒田杏子さんが、この増補新装版では編者として全体の監修もされている。

 黒田さんもあとがきで記しておられるが、俳句をめぐる状況は、旧版から本書までの二十年間で大きく変化した。HAIKUは今や多様な文化圏の人びとが多言語で創作を楽しむことのできる世界文芸である。国内でも、季語にこだわらないカジュアル俳句の浸透、高校生たちが十七音に青春を賭ける俳句甲子園の盛り上がり、誰でも気軽に投句して感想を述べ合うことができるネット句会の発展、テレビのバラエティ番組で句作が取り上げられ人気を博したこと等々の追い風によって、俳句は幅広い世代の人びとの身近な楽しみになっている。もはや国民的文芸だと言ってもいいだろう。

 この状況のなかで、旧版には「二十年前時点での俳句界のオーラルヒストリー」という以上の新たな価値と意味が生じた。よみうり堂では、基本的には新装版は新刊として評しない方針をとっているのだが、本書は単なる新装版ではなく、新たに設けられた第二部の読み応えも素晴らしく(この執筆者二十名の顔ぶれがまた凄(すご)い)、旧版をリブートした新著だと思われるので、躊躇(ちゅうちょ)なくご紹介する次第である。

 『オレ達の足跡を消さずに残してくれて 本当にありがとう』

 これは、「俳句」連載終了時に黒田さんのもとに届いた官製はがきに記された一文だそうだ。差出人は金子兜太さん。旧版から本書刊行までのあいだに泉下の人となられたことを思うと、「ありがとう」がいっそう深く心に染みる。

読売新聞
2021年10月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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