『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ Asioita jotka saavat sydä men ly ö m ä ä n nopeammin』ミア・カンキマキ著(草思社)

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清少納言を求めて、フィンランドから京都へ

『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』

著者
ミア・カンキマキ [著]/末延 弘子 [訳]
出版社
草思社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784794225283
発売日
2021/07/30
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ Asioita jotka saavat sydä men ly ö m ä ä n nopeammin』ミア・カンキマキ著(草思社)

[レビュアー] 南沢奈央(女優)

憧れのセイ 訪ねる旅

 まるで清少納言へのラブレターだ、と思った。本書は、仕事や人生に飽きてしまったアラフォーのフィンランド人女性が、清少納言の研究をするために京都にやって来るところから始まり、ロンドン、プーケットを旅する自伝的紀行エッセイ。本文にもあるが、まさに「アイドルとファンの関係」だ。清少納言のことを、「セイ」と呼び、憧れのセイに近づきたくて、かつて生きた場所の空気を味わうために京都に来る。

 セイ、あなたはどうだった? 生活の中で、たびたびセイに話しかける。京都の食を堪能したとき、行きつけの美容院が出来たとき、山を登ったとき――平安時代の食文化から、当時の人々に「気高い厭世(えんせい)観」「万物の儚(はかな)さ」「もののあはれ」があったのは空腹のせいだと考察したり、当時どれだけ髪が大切な財産でありながら扱うのが大変だったか同情したり、伏見稲荷でくたくたになっていると元気な女の人に追い抜かれて羨ましく感じ、同じような経験が『枕草子』に綴(つづ)られていることを思い出したり。自然な流れで現代から平安時代にタイムスリップしていく構成がおもしろい。合間に挿入される清少納言の言葉も、まるで同世代の女性のブログを読んでいるような見事な現代語訳。

 ただ、いくら調べても清少納言に関する研究書は少なく、生まれ年も没年も本当の名前すらはっきりしない。さらには『枕草子』の原本は残っていないことを知り、愕然(がくぜん)とする。一方で、ライバルとして並べられる紫式部に関する研究が多い理由の推測は、目から鱗(うろこ)。また、平安時代の宮廷において芸術的な感性が養われ、女性たちによる高度な文学が生まれた背景も興味深い。

 著者は約半年の日本滞在で学んだ一番大事なことをこう表現する。「散った花は散っていない花と同じくらい美しくて意味があることだ」。感じるままに生きるふたりの女性から、「どう生きるか」まで考えさせられる本書は、いとをかし。末延弘子訳。

読売新聞
2021年10月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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