現代歌壇をリードする歌人の第15歌集。平成30年夏から令和2年秋までの451首を収めた。産経新聞「歌壇」の選者も務める著者は、時代の空気をつかむ。例えば、本書収録の短歌だ。〈パンデミックのひびき弾めりはじめから人を踊らす言葉のごとく〉
著者はこの歌を詠んだ令和2年初夏、「調子よく弾むような語感の言葉に踊らされるように、社会がコロナに翻弄される感じがした」と話す。コロナ禍で、母の老いていく姿とも向き合った。
〈母がもう忘れたるわが誕生日 未生以前の秋のかぜふく〉
この巻末歌には涙を誘われた。(短歌研究社・3300円)
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2021年10月17日 掲載
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