占いで探し物をする兄弟コンビ、再び! 木原音瀬(このはらなりせ)『捜し物屋まやま 2』を書評家・大矢博子が読む

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捜し物屋まやま 2

『捜し物屋まやま 2』

著者
木原, 音瀬, 1971-
出版社
集英社
ISBN
9784087443097
価格
704円(税込)

書籍情報:openBD

占いで探し物をする兄弟コンビ、再び! 木原音瀬(このはらなりせ)『捜し物屋まやま 2』を書評家・大矢博子が読む

[レビュアー] 大矢博子(書評家)

今度の捜し物は「ママ」? 霊感事件簿第二弾! 

 占いで捜し物をする間山和樹(まやまかずき)と白雄(しおの)兄弟、ドルオタの徳広(とくひろ)弁護士、元引きこもりの三井(みつい)が織りなす、ちょっと怖くて愉快な事件簿「捜し物屋まやま」シリーズの第二弾である。
 前作で和樹と白雄に血のつながりがないことと、白雄に霊感と特殊能力があることが語られた。何より、他者への共感能力がなくサイコパスめいた白雄が、陽キャの和樹にだけは懐(なつ)いているという、なんともいえない関係性がやけに尾を引いたものだ。続きを待ちかねたぞ! 
 第二弾は、小説家でもある和樹の担当編集者・松崎伊緒利(まつざきいおり)の幽霊騒ぎから始まる。引っ越した新居で女の幽霊を見てしまった松崎。どうも前にその部屋に住んでいたシングルマザーで、今は失踪中らしい。彼女の小学生の子供は児童養護施設に預けられているという。その子から「ママは死んでない、ママを捜して」と頼まれたのだが……。
 というわけで、四人組+松崎、そして前作にも登場したドルオタ警察官も一緒になっての大騒ぎが始まる。
 相変わらずのコミカルな乗りで、実に楽しい。だが目を引くのは、その楽しさの中に忍び込む「異質なものの排除」の描写だ。家庭に馴染(なじ)めない松崎、ハーフで服がヘンという理由でいじめられる子供、ドルオタ警察官の意外な過去。思えば前巻で語られた白雄の事情も、「異質なもの」として排除される話だった。自分と違う、それだけで人は線を引く。
 しかし、その線を消したり飛び越えたりするのもまた人なのだと、本書は力強く且(か)つ軽(かろ)やかに伝えてくる。「エピローグ1」の感動的なことと言ったら! 
 人は、他者との出会いを通して変わることができる――それは前作でも語られたことだった。であるならば、サイコな白雄も今後変わってゆくのだろうか。彼を変えるものは和樹なのか、それとも別の誰かなのか。興味は尽きない。
 なお、白雄の秘密についても何やら展開がありそうな気配だが、これは次巻への持ち越しだ。ああ、また次が出るまで待たねばならないのか! 

大矢博子
おおや・ひろこ● 書評家

青春と読書
2021年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

集英社

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