アイドル史を辿りながら考える“時代”と“女性の身体への理解”

レビュー

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アイドル保健体育

『アイドル保健体育』

著者
竹中夏海 [著]/高岡洋詞 [編]/川上健太 [編]/たなかみさき [イラスト]
出版社
株式会社シーディージャーナル
ISBN
9784909774156
発売日
2021/09/14
価格
2,970円(税込)

書籍情報:openBD

アイドル史を辿りながら考える“時代”と“女性の身体への理解”

[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)

 冒頭にある「アイドルや女性のみんながみんな、身体の話にオープンになろう!と強制することを目的としていない」という一文にほっとした。これは勧められる本だ。個人の意見としては、身体の話はタブー化しないというのが大切で、デリケートな話題であってもいいと思っているからである。

 私自身、以前アイドルグループに所属していたので何度も頷きながら読んだ。まさにストイックライヴ全盛期、ちょっとの不調なんかで病院に行く発想も余裕もなかった。生理が来なくなってやっと産婦人科に行き、ホルモンバランスがめちゃくちゃだと診断され「将来的に妊娠を希望しますか?」と聞かれた時、当時全く考えていなかったその2文字に動揺した。そもそも私が病院に行けたのも、メンバーと当時の運営陣が同性で同世代だったため気軽に相談できたことが大きいと思う。誰にも相談できない子が抱えている不安や我慢を想うと心配で涙が出そうだが、先輩として言えるのは「もっと気軽に婦人科で検査して」。あの時、それ以上の結果を聞くのが怖くて通院せず、引退まで治療を先延ばしにしてしまった私が身を以て言えることである。

 本書は一見、読者をアイドルに限定していそうだが、もちろんそれ以外の人が読んでもいい。従来の保健体育の知識に加えて、アイドル史を辿りながら時代と共に変化していく女性の身体への理解を学べるため、お堅い専門書より、完全に女性向けの本より、アイコニックな“アイドル”という入り口で読み始められるのでとっつきやすいかもしれない。

 この書評欄を読んでくれているであろう皆様の年齢層は私と同じ30代以上の完全なる“大人”だと思うが、十分な性教育を受けてこなかった世代だ。そんな我々こそ本書を読んで“知る”ことを始め、下の世代の女性からSOSを出された時にちゃんとした知識で答えたい。

新潮社 週刊新潮
2021年11月4日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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