コロナ救世主の「偉人伝」最初の一冊

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世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ

『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』

著者
増田 ユリヤ [著]
出版社
ポプラ社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784591171448
発売日
2021/10/06
価格
1,045円(税込)

書籍情報:openBD

コロナ救世主の「偉人伝」最初の一冊

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 現在、日本では新型コロナの感染がずいぶんと落ち着きつつある。その最も大きな要因が、ワクチン接種の普及であることは、まず間違いないところだろう。

 その生みの親カタリン・カリコ博士の研究者人生を追ったのが、増田ユリヤ『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』だ。本人及び関係者へのインタビューを元に、その波乱の半生が明かされる。

 ハンガリー出身のカリコ博士は、若くしてその才能を認められていたが、同国の景気の停滞などで研究を続けられなくなり、三〇歳で渡米を決意。しかし米国でも、安定した研究職にはなかなか就けず、不遇の日々を長く過ごした。おそらくは外国出身の女性であるがゆえのハンデもあっただろうし、RNAという研究分野自体が傍流と見なされていた時代であったことも影響しているのだろう。しかしカリコ博士は、研究への情熱だけを支えとして、誰も成功すると思っていなかったmRNAの医療応用を実現させる。その陰にあったのは、早くから世界的研究者に引き合わせるなど熱心に彼女を指導した恩師と、夫の献身的なサポートであった。これらなくして、世界を救ったワクチンは実現しなかっただろう。

 氏の存在は、イノベーションに多様性が必要であることの、またとない例証だ。そして近い将来、カリコ博士の名はキュリー夫人やナイチンゲールと並び、偉人伝の棚を飾ることになるだろう。本書は、その最初の一冊となりそうだ。

新潮社 週刊新潮
2021年11月4日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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