アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち アケミ・ジョンソン著

レビュー

4
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アメリカンビレッジの夜―—基地の町・沖縄に生きる女たち

『アメリカンビレッジの夜―—基地の町・沖縄に生きる女たち』

著者
アケミ・ジョンソン [著]/真田 由美子 [訳]
出版社
紀伊國屋書店出版部
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784314011822
発売日
2021/08/31
価格
2,530円(税込)

書籍情報:openBD

アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち アケミ・ジョンソン著

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

◆相反と親和 葛藤の物語

 日本にある米軍基地の約70%が沖縄本島に集中している。一九四五年から存在の賛否は続いているがアメリカ人と地元民との間で独特の生活と文化が育まれてきた。

 母方に日系、父方にイギリス移民の血を引く著者は京都に在学中沖縄に旅行に出かけ、終戦間際の悲劇の歴史と<アメリカンビレッジ>で兵士と楽しむ沖縄女性の姿のギャップに興味を抱く。辛うじて生きのびた女学生たちがいた沖縄が、いかなる経緯で迷彩柄のヘソ出しルックで女性が踊る今の姿になったのか。多くの女性を取材し十五年の時間をかけて解明しようとした。

 第一章の“リナ”は二十歳の会社員、島袋里奈。二〇一六年、ウォーキング中に元海兵隊員で嘉手納基地委託業者のアフリカ系アメリカ人に暴行殺害され、遺体を雑木林に遺棄された女性だ。広く報道され怒りと悲しみが寄せられたが、驚くのは彼女にも落ち度があったという噂(うわさ)だ。被害者と加害者の間には何の関係もないのに、だ。

 その理由の一つに米軍の駐留をめぐって、地元民とアメリカ人についての多くの物語が存在しているからだと気付く。基地に対する地元民の賛成と反対の対立は戦後から現在まで決着がつかない二律背反がある。著者は男性性が強い基地に対して相反あるいは親和する逞(たくま)しい女性を取材し、理解しようと試みる。

 各章のタイトルは様々な立場で基地と関係を持つ女性のファーストネームである。黒人兵士との結婚を夢見る沖縄人のイヴ。海兵将校の夫と来日し基地で仕事についた白人とアジア人のハーフ、アシュリー。沖縄戦の終結間際、従軍看護隊の中で辛くも生きのびたサチコ。沖縄人で嘉手納基地近くに生まれ、フェンスの中の男性と結婚したアリサ、基地反対のシンボルともいえるスズヨなど十一人の人生が浮き彫りにされる。

 もちろん本書で沖縄の基地問題すべてがわかるわけではないが、観光しか知らない本土の人間にとって沖縄の葛藤の一部をうかがわせる一冊である。

(真田由美子訳、紀伊國屋書店・2530円)

日系アメリカ人四世の作家でジャーナリスト。米アイオワ大大学院修了。

◆もう1冊

上間陽子著『海をあげる』(筑摩書房)

中日新聞 東京新聞
2021年10月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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