『教養としてのアメリカ短篇小説』
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『教養としてのアメリカ短篇小説』都甲幸治著
[レビュアー] 産経新聞社
広い国土に多様な人種が集うアメリカは、先の大戦はもとよりベトナム戦争、対テロ戦争などさまざまな戦争に関わってきた。そんな背景がにじむ13の短編小説を選び、平明な言葉で深く読み解く。
エドガー・アラン・ポーの怪奇幻想的な一編「黒猫」では、題名にもある猫の「黒」という色に着目し、現在に至る人種問題をめぐる暴力と不安の連鎖を考える。J・D・サリンジャーの名編「エズメに―愛と悲惨をこめて」に戦争の深い傷痕を読み取り、苦難に立ち向かうユーモアをたたえる。作品は年代順に並べてあり、19世紀以降のアメリカ文学史を概観できる。(NHK出版・1870円)