『楠勝平コレクション』
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【気になる!】コミック『楠勝平コレクション 山岸凉子と読む』
[レビュアー] 産経新聞社
30歳で早世した漫画家、楠勝平(くすのき・しょうへい)の作品12編を集めた短編集。代表作「おせん」は、貧しくとも明るく働く女性と裕福な男性との恋愛をみずみずしく描写した作品だ。だが骨の髄まで染み込んだ「貧乏」が2人の恋を悲劇に変えてしまう。
多くの短編で江戸時代の庶民の哀歓を描写。人の世のはかなさや、迫り来る死の影が描かれ、決して読み心地の良い作品ばかりではない。ただし、著者が市井の人々に向けるまなざしは温かく、読者の胸のうちに静かな余韻を残していく。編者は『日出処(ひいづるところ)の天子』などで知られる漫画家。(楠勝平著、山岸凉子編、ちくま文庫・990円)