『長崎丸山遊廓』赤瀬浩著(講談社現代新書)

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長崎丸山遊廓 江戸時代のワンダーランド

『長崎丸山遊廓 江戸時代のワンダーランド』

著者
赤瀬 浩 [著]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784065249604
発売日
2021/08/18
価格
1,320円(税込)

書籍情報:openBD

『長崎丸山遊廓』赤瀬浩著(講談社現代新書)

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 ジェンダーの視点から日本史をとらえ直す研究は大きく進んでおり、国立歴史民俗博物館の「性差(ジェンダー)の日本史」展でも広く知られた。近世に幕府公認の性売買の場であった遊郭も、その中で歴史的・社会的に位置づけられている。

 本書は、江戸の吉原、京都の島原、大坂の新町とは違って、日本人以外に唐人屋敷の中国人や出島のオランダ人も対象とし、遊女が十年程の年季明けに近郊の実家に戻ることも多かった長崎の丸山遊郭について明らかにする。史料と先行研究をふまえ、遊郭の実情や都市長崎での位置づけを語る。著者は、長崎市の長崎学研究所長。

 遊郭の構造、経営者はじめ太夫・遊女・禿(かむろ)(見習い)などの人々、価格や作法、遊女や唐人・蘭人(らんじん)の日常など、多岐にわたる。遊女は出産禁止が原則のなかで、長崎遊女は親密になった蘭人の子の出産を認められ、莫大(ばくだい)なプレゼントのほか子と共に手厚い処遇を受ける者もいた。唐人・蘭人側の国際交易での巨利を、長崎に還流する役割を果たしたと指摘する。興味本位でなく遊郭の全体像に迫り、知見に富む書である。

読売新聞
2021年11月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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