「『眞神』考 三橋敏雄句集を読む」北川美美著(ウエップ)

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『眞神』考

『『眞神』考』

著者
北川美美 [著]
出版社
ウエップ
ISBN
9784866081182
発売日
2021/09/25
価格
3,080円(税込)

書籍情報:openBD

「『眞神』考 三橋敏雄句集を読む」北川美美著(ウエップ)

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 三橋敏雄(1920~2001年)の第二句集『眞神(まかみ)』は昭和48年の刊行で収録数は厳選された130句。〈昭和衰へ馬の音する夕かな〉〈鬼赤く戦争はまだつづくなり〉など戦争が暗喩で詠まれ、観念的で謎の多い一冊だ。著者はその一句一句を丹念に読み、敏雄の模索と表現の深層を探ってゆく。

 敏雄は反伝統と表現の革新性を目指した新興俳句から出発し、戦地を思い描いた戦火想望句の連作で注目された。そして生涯を通して無季俳句に賭けたが、その背景には、西東三鬼、渡邊白泉ら先師が受けた表現の弾圧を目の当たりにした痛手と無念があったという。『眞神』の多重の読みを誘う句について、「検閲を逃れる」手法をあえて戦後に再現していると著者は見る。肉薄した読みだ。

 五感や色彩の表現、死者あるいは未生の視線の導入、配列の妙など多角的な鑑賞によって、敏雄のスケールと戦争で生き残った者の声が深掘りされている。

 北川美美(びび)は今年一月に五十七歳で逝去。本書を契機とした新たな議論への応答が叶(かな)わなくなったことが惜しまれる。

読売新聞
2021年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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